【こちら編集局です】学校コロナ対策「机の2メートル間隔必要?」 飛沫予防、現場ジレンマ
新型コロナウイルスの感染拡大を受けた、突然の一斉休校。仕事を休めない親のため、低学年や特別支援学級の子どもを預かる小学校などで、机の間隔を2メートル空ける動きが広島県内でも広がっている。「それで本当に感染が防げるのか」。広島市立校に息子が通う西区の会社員男性(47)が編集局に疑問を寄せた。「子どものストレスになるのも心配。効果がないならやめた方がいい」と言う。学校現場を取材した。
▽「責任ある」「徹底は困難」
中区の幟町小。1〜3年の25人が2教室に分かれ、静かにドリルを解いていた。全員マスク姿。前後左右の席を離し、ぽつりぽつりと座っている。昼食も同じ席。私語をせずに食べるよう指導しているという。
「予防には本来、自宅待機が一番。預かるからには学校が感染源にならないよう対策しないと」と担当教諭。教室入り口にはアルコール消毒液を置き、教室の登校時や食事前の手洗いを徹底。休憩時間は窓を開け放ち、換気する。解散後は毎日、ドアノブや水道の蛇口などを消毒するという。
これらの取り組みは市教委の通達を踏まえ、各校が取り組む。通達は、児童同士のスペース確保についても指示。「前後左右の机一つずつ、または2メートル以上」との目安を示している。
なぜ2メートルか―。「飛沫(ひまつ)感染を防ぐため」だという。感染者のくしゃみやせきで、病原体を含む飛沫(しぶき)が散り、吸い込んだ人が感染してしまうこと。厚生労働省は飛沫が飛ぶ範囲を約2メートルとする。国立感染症研究所も感染リスクが高まる「濃厚接触」の定義に、2メートル以内でマスクなどの予防策をしていない感染者と接触することを含めている。
医療関係者に聞いてみると「間隔を取らないより、取る方がいい」と口をそろえた。ただこんな声も。「一日中間隔を保つのは無理。感染者がいれば結局は広がる」「子どもにせきエチケットの徹底は困難。大きな意味はない」…。
東区のますだ小児科の増田宏院長(60)は「リスク管理は必要だが、厳しすぎると子どもが不安になりかねない」と指摘。「楽しく過ごせる雰囲気づくりにも努めて」と呼び掛ける。
現場はジレンマを抱えているようだ。「本当は自由にさせてやりたいが、何もせずに感染者が出たら責任を問われる」「我慢して留守番している児童もいる」との声が漏れ聞こえる。
苦境の中、学校も工夫を凝らす。幟町小は読書やブロック、あやとりなどの遊びを取り入れ、気分転換を図る。別の市立小は「活動タイム」を設け、塗り絵や折り紙、体育館で運動する時間も作る。ただし濃厚接触を避け、縄跳びやフラフープなど、間隔が取りやすい内容に絞る。「児童はじき飽きる。次の策を考えないと」と校長。当面、現場の試行錯誤が続きそうだ。(田中美千子)
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