【こちら編集局です】休業フリーランス悲鳴 所得補償、会社員と格差
▽「政府対策は借金。生活が維持できない」
新型コロナウイルスの感染拡大の影響でイベントなどの中止が相次ぐ中、たちまち苦境に立たされているのが個人事業主(フリーランス)だ。会社員のような休業手当はなく、仕事再開の見通しも立たない。政府が遅まきながら打ち出した支援策は「融資」で、いわゆる借金でしかない。「生活を維持できない」「もっと実態を知って」―。編集局に、そんな悲痛な声が届いている。
声楽家の今田陽次さん(41)=広島市中区=は「当面は貯金を取り崩しての生活になる」と嘆く。ソリストとして出演予定だった今月のコンサートが中止に。指導料を受け取っている六つの合唱グループの練習も取りやめになった。6〜16歳の子ども4人を育てており、不安は尽きない。「今月の収入は半減しそう。フリーランスにも所得補償を検討してほしい」と訴える。
■枠から外れる
働き手が休業を余儀なくされた場合、当面の所得補償については「雇用されているかどうか」で明暗が分かれる。非正規を含む会社員には、事業主に国が助成し、休業手当が支払われる。一方、フリーランスは、こうした制度の枠から外れる。感染拡大の影響で仕事がキャンセルになっても、「契約先からの補償は一切ない」という声も聞く。短期の契約をつないで報酬を得ているケースもあり、生活への不安を募らせる人もいる。
広島県内に住む50代の司会業女性は「社会人として納税しているのに、会社員との格差が大きすぎる」と困惑した様子。既に3カ月先の予定もキャンセルになったという。政府はフリーランスに対し無金利での貸付制度を設けたが、女性は「融資といっても借金。仕事がなければ返せない。もっと安心できる支援策を考えてもらいたい」と求める。
■「国は検討を」
補償の「格差」といえばもう一つある。学校の一斉休校に伴い子どもの世話で会社を休んだ場合の所得補償だ。雇用保険に加入している労働者たちへの補償は最大で日額8330円。一方、フリーランスに対し一般財源から急きょ追加されたのは日額4100円にとどまる。それも企業などから業務委託を受けて働く一部の人に限られる。ファイナンシャルプランナーの波多間純子さん(52)=廿日市市=は「子育てしながら働く人を支援する制度の観点からすれば、働き方の形態にかかわらず同等に対策を講じるべきだろう」と話す。
これまで政府はフリーランスを「多種多様な働き方」として推奨してきた。労働問題に詳しい水野英樹弁護士(東京)は「政府が多様な働き方を推し進めるのであれば、フリーランスや自営業を支えるセーフティーネットは必要不可欠」と指摘。「生活を保障する一時的な給付金や、失業保険に類する制度など、国は責任を持って検討していくべきだ」と強調する。(鈴中直美、西村文)
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