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【こちら編集局です】休校中、障害のある子がいる家庭は 孤独と疲労、親SOS

2020/3/17 20:53
休校が続く中、自宅でゲームを楽しむ小学6年の息子(奥)を見守る母親(広島市)

休校が続く中、自宅でゲームを楽しむ小学6年の息子(奥)を見守る母親(広島市)

 新型コロナウイルスの感染拡大で学校の一斉休校が続く中、障害のある子どもがいる家庭に重い負担がのしかかっている。自宅で24時間を過ごすわが子のケアに追われる親たち。「孤独感に押しつぶされそう」「介助と感染への恐怖で疲れ切った」―。編集局に届いた悲痛な声を受け、広島市内の保護者や学校関係者を訪ねた。

 ▽感染リスク、現場も苦慮

 「学校がなくてつまんない」。小学6年の息子(12)がこぼすと、そばにいた50代の母親がすぐさま「びっくりしたよねえ」となだめた。自閉症がある息子は学校の特別支援学級に通っている。予定の急な変更が苦手な上、休校で生活のリズムも崩れ、情緒が安定しない日が増えてしまった。

 息子のストレス軽減のためにも、母親は担任を通じて預かりを希望した。だが、かなわなかった。広島県教委は特別支援学級の児童は「預け先がない」場合などに学校での預かりを認めるが、具体的な条件は各校に委ねられる。息子の学校は「親が仕事をしている」児童が対象。この母親は専業主婦のため断られた。

 1人で留守番させるのは難しいため、付きっきりで毎日を過ごさなくてはならない。「休校の期間が予想以上に長い」。母親はため息をつく。

 ■「負い目重なる」

 別の小学校の特別支援学級に2年生の次女(8)を通わせる40代のパート女性は「毎日、中度の知的障害などがある娘とずっと向き合い続けるのは正直しんどい」と打ち明ける。

 学校からの休校のお知らせには「自宅待機が大原則」と書かれており、「学校には預けられないと思った」。頼れる親族は近くにおらず、気分転換になっていた週1回の仕事は休むことに決めた。

 ただ次女は、10分もじっとできない日がある。物を投げ、壁をたたくなど急に騒ぐこともある。女性は休校が始まってまもなく「初めてと思うほどひどい言葉」を浴びせてしまった。

 心身の疲労はどんどん積み重なる。就寝前などに次女をぎゅっと抱きしめる習慣はなくなった。「子どもに手をかけるようなことだけはしたくない…」。思い詰め、必死に心を落ち着かせた日もある。「母親の役割を果たせているのか、娘への負い目が重なる一方。このまま自分が見続けてよいのでしょうか」

 そんな切実な訴えを、学校側はどう受け止めるのか。市教委特別支援教育課は「感染防止を図る趣旨を考えれば、学校の受け入れに一定の枠組みが必要だ」とする。その上で「子どもが1人で過ごせない場合はできる限り対応するのが望ましい。配慮が必要な家庭を把握し、意向を聞く最大限の努力をすべきだが、個々の学校の実情の把握は難しい」という。

 ■支援呼び掛けも

 現場も対応に苦慮する。県内の特別支援学校の30代教員女性は「休校が長引くほど、子どもはストレスがたまる。保護者の負担をできるだけ軽くしたいが、感染リスクが怖い」と頭を抱える。「国と自治体は、子どものケアを学校や福祉事業所に丸投げしている気がする」と疑問も呈する。

 広島文教大の清水克之准教授(児童福祉学)は「緊急時は特に、障害のある子の家庭は孤立し、虐待や事件に発展する恐れもある」と指摘。「母親たちはSOSを出してほしいし、それを関係者はしっかり受け止めてサポートしてほしい」と呼び掛ける。(木原由維) 

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