【こちら編集局です】「五輪延期 宿泊のキャンセルは?」 「返金不可」思わぬ負担
新型コロナウイルス感染拡大を受けた東京五輪・パラリンピックの延期は、チケット購入者に不安を広げた。「チケットの扱いはどうなる?」「宿泊代の返金は」…。編集局にも疑問の声が相次いで寄せられた。取材すると、「キャンセル不可」を掲げる宿泊施設もあり、泊まりがけで観戦しようとしていた人に思わぬ負担が生じるケースがあることが分かった。
「特別な夏にしたかったのに。楽しみを奪われた気持ちです」。広島市中区の会社員八木やよいさん(49)は残念がる。昨年6月、高倍率をくぐり抜けて野球とホッケー、サーフィンのチケットに当選。母親と妹夫婦との4人分で計約15万3千円を支払った。「1年後も優先的に入手できないだろうか」
チケットの利用規約には「(中止や延期に伴う)スケジュール変更で生じた損失は責任を負わない」とある。ただ、今回は五輪史上例のない想定外の事態。大会組織委員会は24日夜の記者会見で「十分配慮したい」としたものの、具体的な説明はなかった。八木さんは「方向性が定まらないのが一番不安。早く示してほしい」と訴える。
心配なのはチケットの行方だけではない。五輪観戦者が予約した宿泊施設の中には、キャンセルを受け付けない施設があるというのだ。
東広島市の会社員東谷明美さん(47)はチケット当選後、すぐに宿泊先を探した。料金が高騰する中、手頃な施設の予約サイトに「キャンセルの場合、全額が請求されます」とあった。ゆっくり選ぶ余裕はなく、家族4人分(1泊2日)の計約3万3千円をクレジットカードで支払った。「キャンセル不可と知って予約したのは自分。泣き寝入りするしかないのでしょうか」
▽弁護士「諦めず交渉を」
本当にキャンセルできないのか。消費者庁に尋ねてみた。同庁消費者制度課は「宿泊のキャンセルは施設側が示す利用規約に従うのが原則」とする。あらかじめ「キャンセル不可」としているのを確認、合意して宿泊料を支払った場合、返金は容易ではないとの見立てだ。
約250のホテルが加盟する全日本シティホテル連盟(東京)の粉川季雄専務理事も「予約サイトやカード会社も絡む問題で、対応は難しい。連盟から加盟施設に対して『返金して』とは言えない」という。
一方でこんなケースもあった。「返金不可」としていた都内のある宿泊施設は、予約客からキャンセルの申請があれば全額返金すると決めた。五輪期間中は通常の3倍の宿泊料金を設定し、既に満室だった。担当者は「こういう状況だけに仕方ない」とし、利用客に寄り添った対応を取る。
「宿泊する何カ月も前から100%のキャンセル料を取る規約はそもそも問題がある。消費者契約法に抵触する可能性がある」。消費者問題に詳しい広島弁護士会の中村健太弁護士はそう指摘する。「諦めず、まずはホテル側へキャンセルする意向を伝え、返金を求めてみて」と助言する。(松本恭治、木原由維)
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