コラム・連載・特集

≪新型コロナ≫緊急宣言延長 長丁場へ柔軟に備えよ

2020/5/6

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が、31日まで延長された。当初は、きょうが「ゴール」のはずだった。14日をめどに見直すとはいえ、肩を落とした人も多かろう。「1カ月で終えることができず国民におわびする」という安倍晋三首相の言が空疎に響く。

 緊急事態宣言を全国一律で延長するよう、全国知事会も申し入れていた。一部の地域で緊急事態宣言が先に解除された場合、余計な人の流れが起きるという危機感からだった。現実的な判断だろう。

 一方で、感染者数が日々増え続ける中、症状が改善して退院した人も、クルーズ船の乗客・乗員を含めて5千人を超えている。重症化への備えは怠ってはならないが、無事回復した人も多いのは新型コロナの際立った特徴ではないか。海外の動向を見ても分かる。

 医療現場は依然、綱渡りが続くものの、感染拡大の抑制と、経済活動や文化活動の再開とを両立させる道筋も、柔軟に探る時期に入ったといえよう。

 100年前にパンデミック(世界的大流行)となった「スペイン風邪」のように、新型コロナも波状的に大流行するなら完全な終息までには数年かかるはずだ。長丁場なら、なおさら緊張感を持ちながらウイルスと「共存」するしかない。

 政府の専門家会議は感染を抑える「新しい生活様式」を示した。手洗い、マスク、大人数の会食の自粛など、既に提唱されてきた内容が主だが、感染が沈静化して見えるからといって安易に元の生活に戻ってはならないという警鐘である。日常的な感染症対策は、今しばらく続けることが欠かせない。

 ただ、休業要請に伴う補償が曖昧なままスタートした緊急事態宣言は、今のまま延長すればするほど、個人事業主や中小企業の資金繰りが悪化する。自動車など製造業の休業も長引けば雇用に深刻な影響を与える。

 減収や失業、倒産に伴う影響は軽視できぬ危険水域に入るだろう。福島第1原発事故では酪農家の悲劇もあった。前途をはかなんで自死を選ぶ人が相次ぐことのないよう、手を打つことも忘れてはならない。

 今回の延長で「現場に近い地方自治体の首長の役割がより大きくなる」と、元全国知事会長の山田啓二氏はみている。土地柄も感染状況も、都道府県で異なる。独自の判断をより重視し、この危機を乗り切るべきである。中国地方でもきのう、広島県などが段階的に休業要請を緩和する方針を打ち出した。妥当な判断だろう。

 例えば居酒屋なら、店と客が感染症対策に十分配慮した上で、酒類の提供時間を何時間かでも延ばせる緩和措置があれば、希望が持てるに違いない。

 長丁場に臨むに当たって、国に求めたいのは目的を明確にした検査体制の強化である。京都大教授の山中伸弥氏も、PCR検査は感染を疑われる人の診断や院内感染予防を目的として行い、市中感染の広がりは抗体検査を用いて把握すべきだ―と提唱している。この分野にも多角的な視点が求められる。

 明るい兆しはあっても、緊張の糸を緩めることはまだ許されない。重ねて確かめ合いたいが、基本になるのは私たち一人一人の自覚ある行動である。 

 あなたにおすすめの記事

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

社説の最新記事
一覧