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ポスト過疎法 人口減時代の新地平を

2020/5/9

 学者や首長などでつくる総務省の過疎問題懇談会が先月、現行の過疎地域自立促進特別措置法(過疎法)を巡る提言をまとめた。来年春の期限切れ以降も引き続き、財政支援を講じる制度が必要とした。

 過疎法は1970年以来、議員立法で10年ごとに繰り返し定められてきた。今回も、与党が期限延長や新法への衣替えを検討する見通しだという。

 「過疎」の言葉を生んだ中国山地などに財政支援の手を差し伸べた最初の法制定から、半世紀。既に日本全体が人口減の局面に入っている。今回の提言を一つの手掛かりとして、過疎地域の支援策に新たな地平を切り開いてもらいたい。

 現行法の「自立促進」に代わる理念として、懇談会は「持続的発展」を打ち出した。2030年をめどに国連の掲げる、持続可能な開発目標(SDGs)に倣ったらしい。理念を成し遂げるために挙げた四つの目標でも「地域資源を生かした内発的発展」をうたう。

 「発展」にこだわるのはどうだろう。日本社会は今や、成長から成熟の段階に移っているのではなかったか。

 ただ、地域の資源や人材に目を向ける、地域主導の「内発」を重んじる発想には合点がいく。過疎振興は従来、企業誘致や大規模な観光開発事業といった「外来型開発」に偏っていた。青写真を描く段階からコンサルタントの力を借り、地域の資源や人材の掘り起こしにつながったとは認めがたい。

 一方で、それは補助金漬け行政とも評される自治体の姿勢を問い直すものでもあるだろう。補助金にすがりつくあまり、省庁の示す事業メニューに頼っていては外来型のままだ。

 提言の求める地域づくりの在り方にはうなずける点も多い。問題は、それを誰がやるのか―ということに尽きる。

 懇談会の提言で、現行の過疎法にない「人材」という文言を盛り込んでいるのも、そんな問題意識からだろう。

 人材育成の方策として、郷土愛を育む「ふるさと教育」や、その地域、学校でないと学べない授業を編み出す「高校の魅力化」を挙げている。いずれも、島根県が早くから取り組み、実を上げてきたものである。

 とはいえ、内発型へと発想の転換を求めようというのなら、過疎対策のお手本を示すこと自体、つじつまが合わないのではないか。成功モデルのまねをするのは、決して内発型ではないからである。

 地域の個性を見いだすときに、よそから関わり続ける「関係人口」や移住者といった門外漢の視点は糸口になり得る。例えば、材木が売り手市場だった時代を知る地元の人なら見向きもしない中四国地方の森で今、一人でも可能な自伐型林業の道を移住者や若者が広げている。

 懇談会は、新型コロナウイルスについても末尾で付言した。高密度な都市の成長が戦後日本を底上げした半面、人口集中が感染症や災害でリスクとなる側面に触れた上で、こう書く。「都市とは別の価値を持つ低密度な居住空間がしっかりと存在することが国の底力ではないか」

 いざというときに支えとなる過疎地域の価値や役割について、都市住民に分かってもらうことが欠かせない。 

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