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≪新型コロナ≫自粛の緩和 出口へ明確な基準示せ

2020/5/10

 新型コロナウイルスとの闘いが新たな局面を迎えた。

 大型連休までとしていた緊急事態宣言を今月末まで延長する一方、政府は新たな基本的対処方針を示した。

 13の特定警戒都道府県には引き続き人と人との接触の8割減を求めたのに対し、中国地方など34県は地域の感染状況を踏まえて、事業者への休業要請や外出自粛を柔軟に緩和できるようになった。

 もちろん気を緩めるわけにはいかないが、感染防止対策とうまく折り合いを付けながら、社会・経済活動の再開を探っていく段階に移ったと言える。

 中国5県でも、連休明けの7日から自粛を緩和する動きが出ている。

 山口はパチンコ店以外の業種を対象に休業要請を解除した。島根、鳥取はパチンコ店に限って連休中の休業要請をしていたが、解いた。休業要請をしていなかった岡山もイベント開催や店舗営業などへの自粛要請を条件付きで緩めた。

 広島は段階的に緩和を進める考えだ。当面、これまでの休業要請を維持し、11日に美術館や映画館などから解く。20日ごろにはデパートや学習塾などで、もう1段階の緩和を判断する。

 湯崎英彦知事は「一気に緩和すると再び感染が拡大していくと専門家から指摘を受けた」と説明する。最終的には6月1日を目標に飲食店なども通常営業に戻すシナリオを描く。

 人の動きが活発になれば、その分感染リスクは高まる。自粛の緩和は感染防止対策が十分に講じられていることが前提になるのは当然だが、医療現場からは「人の動きが活発になったときの揺り戻しが怖い」と警戒する声も上がる。

 感染の封じ込めと経済活動との両立は容易でない。一つ間違えれば再び感染拡大に転じ、医療現場の逼迫(ひっぱく)を招きかねない。

 だからこそ休業要請や外出自粛の解除には慎重な対応と科学的な根拠が求められる。

 西村康稔経済再生担当相は「自粛の要請や解除は知事権限」と強調するが、要請は緊急事態宣言に伴う対処方針が土台になっている。ならば宣言を発した政府の責任で、明確な解除基準を示すのは当然だろう。

 安倍晋三首相はようやく14日をめどに宣言解除に向けた判断基準をまとめる考えを明らかにしたが、遅すぎる。本来なら延長する際に示すべきだった。

 長引く自粛の要請で生活や経済活動が大幅に制限され、国民には疲れや不安、不満が募っている。

 どのような状況になれば、どの程度の社会・経済活動を再開できるのか。国民が納得できる「出口」への道筋が求められている。政府には判断基準の物差しとなる指標について分かりやすくデータを示し、徹底した説明をする必要がある。

 新型ウイルスの感染終息には、ワクチン開発などを待たねばならず、長期的な取り組みが求められる。感染の第2、第3波も想定される。再び緊急事態を宣言しなければならない場合もあろう。

 新型ウイルスを正しく恐れ、命と健康を守る行動を暮らしに定着させていかなければならない。科学的なデータに基づいた説得力ある情報発信が政府に求められる。 

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