【こちら編集局です】「捜査介入招く」反対多数、検察庁法改正案に対する意見 河井夫妻疑惑への影響懸念も
国会で審議中の検察庁法改正案に対し、会員制交流サイト(SNS)のツイッター上で抗議が相次いでいる。検察官の定年を65歳に延長し、63歳で役職から外れるとしながら、内閣が認めれば役職を続けられるとの規定に、検察庁の独立性が揺らぐなどと批判が集まる。中国新聞が無料通信アプリLINE(ライン)で意見を募ると、200件を超える声が寄せられ、「時の政権の恣意(しい)的な人事が可能になる」「捜査への介入を招く」などと反対の意見が多数を占めた。
改正案は、幹部検察官は63歳で役職を降りる「役職定年」を導入する一方、内閣が認めれば次長検事、高検検事長の定年を延長できると定める。
「戦後最大の汚職」とされるロッキード事件で元首相を逮捕したように検察庁は国政中枢に切り込む捜査もしてきたが、広島市東区の国家公務員男性(56)は「組織は常に内閣の判断を気にするようになる」と懸念。同市西区の会社員男性(48)は「政権に都合の悪い事件が不起訴にされたり、もみ消されたりするのでは」と心配する。
政府は1月、首相官邸に近いとされる黒川弘務東京高検検事長(63)の定年を延長する異例の閣議決定をした。検事総長に就くとの見方があり、疑問の意見が続出した。広島地検が捜査を続ける、自民党の河井克行前法相(衆院広島3区)夫妻を巡る公選法違反事件への影響を懸念する声も多く、「河井夫妻の件と関係あるのかと疑ってしまう」と広島市西区の主婦(54)。克行氏は安倍晋三首相とも近いだけに、同市中区の無職男性(51)は「事によってはもみ消す手段に使われかねない」と案じる。
新型コロナウイルスの感染拡大で安倍政権の対応が日々問われる中、改正案の審議は「不要不急」に映る。「新型コロナの感染対策のすきにつけ込んだ火事場泥棒そのもの」と東広島市の農業男性(65)。福山市の主婦(35)は「法改正が本当に必要であればコロナ禍の収束の後にしかるべき方法で決定し、改正してほしい」と訴える。
検察庁法改正案は、国家公務員の定年を65歳に引き上げる国家公務員法改正案と一体で審議されている。広島市安佐南区の主婦(69)は「(民間は)65歳定年になっている」とつづるなど、改正案に理解を示す意見も寄せられた。
ツイッター上には「検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグ(検索目印)を付けた投稿が相次ぎ、著名人も投稿している。広島市安佐北区の男子大学生(19)は「反対意見の大半は法案への不満というより、安倍首相が信用できないからとの印象を受ける。何が危険で、何が良くなるのか分からない」と指摘した。より丁寧な政府の説明が求められている。(山崎雄一)
▽専門家「独立性弱める」
検察庁法改正案を巡り、専門家は政府の手続きの不透明さを指摘し、検察の独立性が危ぶまれるとの懸念を示した。
甲南大法科大学院の園田寿教授(刑法)は「検察官に定年延長がないとの解釈は何十年も政府が維持してきた」と強調。黒川弘務東京高検検事長の定年延長を政府が解釈変更で閣議決定し、法改正にも動いた経緯を問題視し「手続きが不明瞭」とした。
改正案は63歳以降は幹部ポストに就けなくする一方、内閣や法相が認めれば定年延長できる規定も盛り込む。広島高検元総務部長の見越正秋弁護士(広島弁護士会)は「検察官の独立性を弱める形になっている。政治と距離を置くのが検察官の矜持(きょうじ)。黒川氏は検事長の職を辞するべきだ」と断じた。
一橋大大学院の中北浩爾教授(現代日本政治論)は「世論の抗議のうねりの背景には新型コロナウイルスの感染拡大と黒川氏の人事への政権批判がある。不満がたまっていることがうかがえる」と読み解く。
<クリック>検察庁法 1947年に制定され、検察庁の組織や検察官の任命などを規定。検察官の定年については検事総長が65歳、それ以外は63歳と定め、延長の規定はない。衆院で審議中の改正案では検察官の定年を65歳に段階的に引き上げ、63歳に達した次長検事と検事長らは役職を降りる「役職定年制」を導入する一方で、内閣が公務の運営に著しい支障が生じると認めた場合、引き続き定年まで次長検事と検事長を続けられる規定も設けている。
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