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秀吉の親心「幻の城」

2020/5/14

 京都の町家で取材中に「どんどん焼け」の話が出てくると、古いおうちだな―と実感する。幕末の蛤御門(はまぐりごもん)の変に端を発した大火。尊攘(そんじょう)派の長州藩が洛中に出兵して争いとなり、それこそ、どんどん焼け野原に▲天皇の住まう御所は難を免れたが、権力者が覇を競った古都には、意外や足元に壮大な遺産が眠るらしい。京都仙洞御所辺りで発掘中、豊臣秀吉にとって最後の城「京都新城」の跡が姿を現した。公家の日記にわずかに記述が残る「幻の城」だった▲関白秀吉の公邸としては「聚楽第(じゅらくだい)」があまりにも有名だ。安部龍太郎さんの小説「等伯」でも「都のど真ん中を武家が占領したような威容を誇っていた」と表現する▲その聚楽第を破却し、2年後、幼い秀頼のために新城を築く。老いた秀吉の親心がしのばれよう。先々を案じ、天下人より関白家の跡継ぎとして生き残る道を探ったのか―と研究者は見立てる。現実には、秀頼は大坂城で武人として自裁するのだが▲金箔(きんぱく)瓦が出土するほど豪勢な新城もまた、関ケ原の戦いを前に打ち壊されたという。ゆえに幻の城となる。残念なことに、コロナのせいで現地見学会はないが、いつか行く京都の楽しみは一つ増える。

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