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河井前法相立件へ カネまみれ選挙、解明を

2020/5/14

 昨年7月の参院選広島選挙区で初当選した自民党の河井案里氏と、夫で前法相の克行衆院議員(広島3区)による買収疑惑が新たな局面に入った。

 検察当局は、夫妻が広島県内の地方議員や首長に現金を配ったとみて、克行氏を公選法違反(買収)の疑いで立件する方針を固めた。案里氏の立件も視野に入れているようだ。

 この選挙では既に、法定を超す報酬を車上運動員に払ったとして案里氏の公設秘書が公選法違反(買収)の罪に問われ、裁判が進んでいる。連座制が適用されれば、案里氏は失職する。

 今回の買収疑惑は、議員が直接関わっているだけに、より重大である。金まみれ選挙で議席を得た恐れがある。徹底的な解明が求められる。

 河井夫妻と安倍晋三首相との関わりは深い。党本部は、案里氏の陣営に選挙資金を1億5千万円も渡していた。同じ選挙区で同様に党公認を得て議席を争った溝手顕正氏の10倍に当たる。破格の扱いと言えよう。

 夫妻が県議らに配った金は、どこから出たものだろうか。党本部による資金の大盤振る舞いが「ばらまき」につながったのかもしれない。その責任を自分の秘書を送り込んでまで支援した党総裁である首相は、どう考えているのか。買収の原資の一部になった恐れがある以上、1億5千万円がどう使われたか、党としても調べる必要がある。

 首相は昨年秋、克行氏を指揮権を持つ法相に選んだ。理由や任命責任が改めて問われる。

 「政治とカネ」を巡る疑惑だけに、検察は政権に忖度(そんたく)せず捜査のメスをふるってもらいたい。ちょうど今、国会で審議中の検察庁法改正案との関連も注目される。検察官の定年延長は当然だろうが、内閣や法相の判断でポストに居座れる規定は看過できない。政権による検察幹部人事への介入を許しかねないからだ。

 政権によって意のままに操られれば、検察の独立性が揺らいでしまう。三権分立を危機に陥れる恐れも出かねない。反対の声が広がるのは当然だろう。

 にもかかわらず安倍政権は強硬に成立させる構えを崩していない。そんなことから今回の疑惑捜査の背景に、政権と検察とのせめぎ合いがあるとの見方もある。あながち的外れではあるまいが、検察には、真相を明らかにすることが求められる。

 本紙の取材に対し、県議と広島市議ら14人は、河井夫妻側が現金を持ってきたと答えている。昨年4月の統一地方選前後に30万〜50万円を持参したケースが多かったという。「選挙を応援してくれという趣旨の金だろうなと思った」などの声も聞かれる。金を渡した趣旨は、おのずと明らかではないか。

 これに対し、夫妻が今も何ら説明していないのは許し難い。案里氏に至っては先週、いつ説明するか記者団に問われ「いずれね」と答えた。再質問には「またね。ゆっくりね」とはぐらかした。誠実な態度とは程遠く、あきれるほかない。

 票の取りまとめのため金を配った自覚が夫妻にあれば、すぐ議員を辞めるのが筋だろう。無実だと主張するなら、党からの1億5千万円を含め、選挙関連の金の流れを有権者に説明すべきである。それができないならやはり議員の資格はない。

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