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≪新型コロナ≫「宣言」一部解除 気の緩み厳に慎みたい

2020/5/15

 政府はきのう、新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言の対象から、中国地方の5県を含む計39県を前倒しで解除した。

 感染の動向を見つつ段階的に解除する方向性に異存はない。海外のように移動などを禁じる「都市封鎖」によらず、小康状態に至った。各県の住民が危機感を共有し、外出自粛に協力した成果といえよう。

 ただ、もろ手を挙げるわけにはいかない。首相が「宣言」を延長して2週間足らずである。大型連休の影響が見えるのはこれからのはず。一部とはいえ解除による気の緩みから、感染の再燃を招いては元も子もない。この時点での解除に当惑する知事が目立つのも当然だろう。

 実際、規制の緩和にいち早く乗り出した国々で集団感染が相次ぐ。今回解除となった愛媛県でもきのう、院内感染が見つかった。ウイルスに隙を与えれば、感染の第2波にさらされる。緩みは、厳に慎みたい。

 「宣言」解除を受け、広島県はきょうにも休業要請の解除などを協議する。県境を挟んで休業要請解除の対応が割れれば、越境して飲食や買い物に出掛ける人も現れよう。パチンコ店に人が集中し、ごたごたした例もあった。観光、宿泊業などの打撃も見定めながら「不要不急」の移動を控えるよう、近隣県と歩調を合わせるべきだろう。

 住民の協力を引き続き求めるならば、地域版「出口戦略」の判断基準や足元の感染状況について、自治体は分かりやすく示す必要があるのではないか。その点、大阪府が規制と解除の目安に挙げた独自基準ごとの達成度を、信号機の3色になぞらえてホームページ上で公開しているのは参考になる。

 政府の「宣言」解除も本来、判断の条件や数値をあらかじめ示しておき、クリアした地域から解除するのが筋だった。感染がぶり返したときの再指定も含め、全国知事会も再三、判断基準の明示を求めていた。

 首相はきのうの記者会見で、新たな感染者数や近隣の都道府県での感染状況、医療体制などを基に「総合的に判断した」と説明した。ただ、数値などの具体的情報の開示は限られ、あいまいさが拭えない。

 何より感染の実態が、いまだに判然としていない。先日やっと、「抗原検査」の簡易キットが公的医療保険の適用になり、特例で患者の自己負担もゼロとされた。短時間で判定でき、医療現場には救いだろう。PCRや抗体検査と組み合わせ、「出口戦略」に不可欠な感染状況の把握につなげてほしい。

 次の流行に備え、急がれるのは患者が適時適切な治療を受けられる態勢である。準備の時間と余力を稼ぐために、感染の拡大防止が大事になる。

 そのためにも、以前と同じような生活や働き方に戻るのではなく、首相も言う「新たな日常」づくりの意識が重要だろう。「3密」回避は、事業所でも欠かせない。職場の環境を安全に保つ雇用主の責任は、なおさら重みを増す。

 学校も再開が視野に入り、分散登校といった形が議論されるだろう。学校、家庭とも、それこそ薄氷を踏むくらいの慎重な姿勢が欠かせまい。

 地域社会への対応は一義的には自治体の務めだが、政府にも一層の財政支援を望みたい。

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