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核燃料の再処理 政策の破綻は明らかだ

2020/5/16

 青森県六ケ所村で建設している日本原燃の使用済み核燃料再処理工場の安全対策が、原子力規制委員会の審査に事実上合格した。

 全国各地の原発から出た使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出して、再利用する政府の核燃料サイクル政策の中核施設である。大きなヤマ場を越えたといえるが、今後も手続きなどに時間がかかるとみられ、日本原燃が目指す2021年度の稼働は不透明だ。

 東京電力福島第1原発事故後、プルトニウムを再利用するはずだった原発の多くは止まったままで今後の見通しも暗い。

 何の展望もないまま手続きを進め、なし崩し的に工場の稼働を目指す姿勢は無責任にすぎる。もはや核燃料サイクル政策が破綻を来している。政府は撤退を決断すべきだ。

 93年に着工し、当初は97年の完成予定だった。だが技術的なトラブルが相次ぎ、24回も延期を繰り返してきた。建設費も当初想定の4倍に当たる3兆円近くに膨れ上がっている。

 使用済み核燃料の中には、プルトニウムやウランの一部が残っている。それらを再処理して取り出し、混合酸化物(MOX)燃料に再加工して使う。限られたウラン資源を節約し、有効利用するのが狙いだ。

 MOX燃料は本来、高速炉で使う計画だったが、原型炉のもんじゅが深刻な事故を起こし、16年に廃炉が決まった。実用化のめどは立っていない。

 代わりに普通の原発で燃やすプルサーマル発電の推進にかじを切ったが、原発の再稼働が進まず導入は4基にとどまる。使用済みMOX燃料は取り扱いが難しく再処理する施設はない。国内に搬出先もなく原発内のプールで長期保存するしかない。

 日本は既に国内外で47トンのプルトニウムを保有している。核兵器にも転用でき、長崎原爆に換算して6千発分に相当する。日米原子力協定により、核兵器を持たない国では日本だけが特例的に使用済み核燃料からプルトニウムを抽出することが認められてきた。

 しかし協定の延長を巡る2年前の交渉では、たまり続ける日本のプルトニウムに対し、米国からも核拡散につながると懸念する声が上がった。日本政府は削減方針を示したが、海外から厳しい視線が注がれている。

 「利用目的のないプルトニウムを持たない」ことを日本政府は原則とする。使用済み核燃料を再処理する必要性はもはや見いだせない。国際社会に疑念を抱かれないためにも、核燃料サイクルと決別する必要がある。

 再処理工場の総事業費は約14兆円と試算されている。電力会社が負担し、電気料金が原資となる。破綻した政策を見直さないまま巨費を投じ、その負担を消費者に押しつけるのはあまりにも理不尽だろう。

 政府や電力会社が再処理にこだわるのは、各地の原発でたまり続ける使用済み核燃料が行き場を失ってしまうからだ。再処理から撤退すれば、六ケ所村に持ち込まれた使用済み核燃料は廃棄物となり、青森県などとの約束に従って県外へ搬出しなければならない。

 政府は、先送りしてきた「核のごみ」の処分問題と正面から向き合い、原子力政策を見直さなければならない。

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