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旅の日

2020/5/16

 月日は百代の過客(かかく)にして、行きかふ年もまた旅人なり。「奥の細道」の書き出しである。月日は旅人であり、人生もまたそのようなもの―。芭蕉の卓見に違いない。300年以上前のきょう、江戸をたっている▲俳聖に倣えば私たちは毎日旅をしているわけだが、それでもきょうが「旅の日」という。旅行文化を考える団体、日本旅のペンクラブ(旅ペン)が芭蕉の出立にちなんで定めた。外出も控える今はぴんとこないけれど▲「旅の日」川柳を募っている旅ペンが、今年の入選句を発表した。大賞は「一年中旅館でしたいテレワーク」。コロナを恨みつつ仕事をするうち旅の宿が思われたのだろう。「呼び込みも冴(さ)えぬマスクの観光地」にうなずく人も多いはず。今は訪ねても心弾むまい▲4月後半の消費動向の指数を1月後半と比べると「旅行」は95%減。クレジットカード利用情報を基にした分析だ。宿泊や交通などレジャー消費はがた落ちする。観光立国だと沸いた日もあったが、兵(つわもの)どもが夢の跡か▲「夢に見る不要不急のひとり旅」。川柳が嘆くように、時刻表でも眺めて今は夢想するしかないらしい。国内外をあちこちする過客に戻れるのはいつの日だろう。 

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