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少子化対策大綱 環境整備まだ足りない

2020/5/17

 今後5年間の少子化施策の指針となる「少子化社会対策大綱」案を政府がまとめた。国民から募った意見を踏まえて、今月中に閣議決定する。

 5年おきに策定している大綱は今回が第4次。結婚や妊娠、子育てに温かい目を向ける社会の実現によって少子化に歯止めをかけようと、今までさまざまな施策を展開してきた。しかし十分な効果は出ていない。

 少子化と、それに伴う人口減少がこのまま続けば、社会に与えるダメージは計り知れない。市場規模の縮小など経済的な悪影響が深まりかねず、働き手、つまり社会保障の担い手の減少で年金や介護、医療制度の安定性も揺らぐ。地域社会を支える人も少なくなってしまう。

 現状は深刻さを増している。総務省の人口推計(4月1日現在)によると、14歳以下の子どもは前年より20万人少ない1512万人と、39年連続で減少した。総人口に占める割合は12・0%と、人口4千万人以上の32カ国で最も低いという。国際的にも危ういレベルと言えよう。

 昨年生まれた赤ちゃんは約86万4千人で、1899年に統計を始めて以来、最少となった。国立社会保障・人口問題研究所が3年前に出した推計と比べ、2年早いペースで少子化が進んでいるという。急速な人口減少にもつながっている。

 何が原因か―。大綱案は、若い世代での未婚率の上昇や、初婚年齢の上昇、つまり未婚や晩婚の影響が大きいと分析している。その背景には、非正規雇用が労働者全体の4割に上るなど不安定な雇用環境や、仕事と子育ての両立の難しさ、女性にいまだ偏っている家事・育児の負担―などを挙げている。的を射た指摘ではないか。

 安倍晋三首相は2017年秋に少子高齢化を「国難」と位置付けて衆院解散に踏み切った。しかし子どもを産み、育てやすい環境の整備は不十分なままだ。政府がどこまで本気か疑わしいと言わざるを得ない。

 例えば育児休業を取る男性を増やすための「給付金」拡充。賃金の最大67%という水準を80%に上げる案が浮上したが、大綱案では「充実を含め総合的に検討する」との曖昧な表現にとどまった。大胆な施策なしに、現状を打ち破れるのだろうか。

 もちろん子どもを産むかどうかは、夫婦やカップルの自由な判断次第である。とはいえ、実効性のある具体的施策を進める責任が政府にはあるはずだ。

 雇用が不安定なため結婚や出産に踏み切れない若者が増えている。後押しするには、非正規労働者の給料・待遇の改善、正社員化の促進などが急がれる。

 共働き夫婦が増えているのに「ワンオペ育児」に象徴されるように、家事負担は女性に集中したままだ。軽減に向け、男性を含めた長時間労働の解消や、ワークライフバランスの促進といった働き方改革を加速しなければならない。コロナ禍によるテレワークの広がりをどう生かすか、企業の知恵も問われる。

 個人だけではなく、企業や社会全体に長年染みついてしまった男女の役割分担意識も、一変させる必要がある。

 持続可能な社会を目指すためにも、政府は、若い世代が子どもを産み、育てようと考えるような環境づくりに一層力を入れなければならない。 

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