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ナイチンゲール生誕200年

2020/5/17

 1820年と言えば日本は江戸後期。「一茶だの塙保己一(はなわ・ほきいち)だのという人が活躍した時代」だと、ある女性の生まれ年について作家の宮本百合子が伝記につづっていた▲近代看護の礎を築いた英国の看護師フローレンス・ナイチンゲールのことである。先頃、生誕200年を迎えた。宮本が江戸時代の俳人や国学者を持ち出したのは、日本で女性が活躍するには程遠い時代だったことを押さえておきたかったのだろう▲英国とてこの時代、働く女性に光が当たる機会は少なかったはず。特にけが人や病人を看護する仕事は偏見にさらされていたらしい。ナイチンゲールも周囲の無理解に悩んだ。それでもクリミア戦争のさなか先頭に立って野戦病院で働き、多くの命を救った。その功績が看護という仕事への世の認識を高めた▲未知の感染症が広がる現代はどうか。医療現場の最前線にいる看護師たちへの差別や誹謗(ひぼう)中傷が深刻な問題となっている。患者の命を救うため感染の危険と隣り合わせで闘っているのに▲もちろん、心ない人ばかりではない。拍手やメッセージで感謝を伝える動きも生まれている。感染予防と同じくらい気を付けて人の心をむしばむ差別も防がねば。 

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