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「鉄板端会議」危うし?

2020/5/19

 似たような「粉もん」は世界に数あれど、作り方も食べ方も独特だ。店のあるじは、うずたかくキャベツを積み重ねてはひっくり返す。客はへらで熱々を口に運び、はふはふと頬張る。鉄板の向こうとこちらで練達の技を見せ合う▲広島市内のお好み焼き店で鉄板前のカウンター席を使わない動きがあるという。店主や隣の客と湯気越しの世間話を楽しみながら焼き上がりを待つ。それも隠し味のはずだが、ウイルスが入り込む余地を招きかねない▲とはいえ、市内にお好み焼きののれんがない路地はないと言いたくなるほど、鉄板を囲む席だけの小さな店があちこちに。「新しい日常」という名のコロナ対策がいかに難しいか。店側の苦悩は察して余りある▲そもそも路地の店は、老若男女を引き寄せてやまない磁場だった。昼時は女性たちが存分におしゃべりし、部活を終えた中高生が帰り道に小腹を満たす。日が暮れれば、ビール目当ての会社員たち。井戸端ならぬ鉄板端会議はいつだって、にぎやか▲そんな日常をうずたかく積み重ねてきたからこそ、広島のソウルフードと呼ばれている。ウイルスよ、ここは熱々の湯気に恐れをなし、逃げ出してくれないものか。 

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