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≪新型コロナ≫夏の甲子園中止 安全優先やむを得ぬが

2020/5/21

 夏の全国高校野球選手権大会の中止が決まった。新型コロナウイルス感染の収束が見通せない中、リスクを考慮すれば、やむを得ない判断だろう。

 だが「夏の甲子園」を夢見て厳しい練習に打ち込んできた高校球児たちの心境を考えれば、心が痛む。とりわけ「最後の夏」となる3年生の無念さ、悔しさは察するに余りある。学校はもちろん、家庭でも球児たちの心のケアに努めてほしい。

 甲子園球場で開かれる高校野球は、スポーツの枠にとどまらない国民的なイベントと言ってもよかろう。大会の中止は3回目で戦後初となる。春の選抜大会に続き、春夏合わせて中止になるのは今回が初めてだ。

 感染者は減少傾向にあり、何とか開催できるのでないかとの見方もあっただけに残念である。ぎりぎりまで状況を見ながら無観客試合などでの開催の可能性を探ってきた日本高野連などの姿勢は理解できる。

 日本高野連は中止の理由として、6月下旬から始まる49の地方大会の開催が極めて難しくなったことを挙げた。

 緊急事態宣言は39県で解除されたものの、感染リスクがなくなったわけではない。休校や部活動の休止が長期に及んでいるため、練習が十分でない選手のけがが予想されると判断した。健康や命に関わるとなれば軽視できない。

 学びの遅れを取り戻すために夏休みを短縮し、登校日を増やす動きが各地で出ている。同じく夏休みに開かれる全国高校総体(インターハイ)や全国中学校体育大会は早々と中止が決まっていた。

 地方大会を開催すれば、学業の支障になりかねず、高校野球だけを特別扱いするような印象を持たれることを避けたかったのだろう。

 甲子園球場で8月10日に開幕する予定だった全国大会にしても、全国から選手や関係者が移動して集まり、集団で宿泊することになる。感染や拡散のリスクが高まることがあっても、排除できないのは明らかだろう。

 夏の甲子園へつながる地方大会は中止となったが、日本高野連は各地域の大会開催について支援の要望があれば、支援を検討するとしている。

 各都道府県の高野連は、球児たちがこれまでの練習成果を生かし、ベストを尽くすことのできる大会開催の可能性を探ってほしい。沖縄県高野連などが独自の県大会の開催を検討しているという。

 もちろん高校野球に限ったことではない。全国高体連は部活動が安全に再開できるようになることを前提に、都道府県の高体連に3年生が成果を発揮できる場や大会の設定を要望した。

 高知県で夏に予定されている全国高校総合文化祭(総文祭)は、インターネットを活用して参加者を集めず開催される。演劇や書道、美術などをオンラインで披露する方式に変えて、発表の場を確保する。

 こうした動きを歓迎したい。

 高校生の夢が不完全燃焼のまま、半ばで絶たれるようなことはできるだけ避けねばならない。さまざまな知恵を絞り、次のステージに向かうために区切りとなる舞台を提供するのが大人たちの役割だろう。ここまでやったという体験が子どもの成長につながるはずだ。 

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