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黒川検事長の賭博 「閣議決定」誤りだった

2020/5/22

 東京高検の黒川弘務検事長を法務省は訓告処分とした。都内で新聞記者らと賭けマージャンをしたことが週刊誌に報じられたためだ。黒川氏は報道内容を認め、首相に辞表を提出した。

 今月、新型コロナウイルス感染拡大で全国に緊急事態宣言が発令されている中、違法な賭博行為をしていた。法の番人である検察庁の幹部として不適切なのは言うまでもなく、社会的にも許されない。

 にもかかわらず「訓告」処分とは軽すぎるのではないか。きょう閣議で辞職を承認するというが、政府はどこまで黒川氏を特別扱いするつもりだろう。

 黒川氏は、内閣が今年1月に法解釈を変更し、閣議決定までして定年延長した人物である。野党の批判を浴びたこともあって、政府はその後、政府の判断で定年を延長できる検察庁法改正案の成立まで図った。

 黒川氏が法に触れる賭博をしていたことで、あらためて閣議決定について、政府の判断の是非が問われる。

 報道によると、緊急事態宣言が出ていた今月初めと中旬に、新聞記者宅で賭けマージャンをしたとされる。刑法の賭博罪に問われることもある。黒川氏は内務調査に対し、認めているという。検察幹部が賭博に加わっていたことは極めて重大だ。

 さらに緊急事態宣言下で「不要不急」の外出をし、「3密」の状況にいたことも問題だ。

 もちろん同席した新聞記者も同罪だ。取材活動の一環などという説明は、通用しないどころか、違法行為を是認するものである。

 黒川氏の任命権者である内閣は、きょう閣議で辞職を承認するという。今年1月、黒川氏の定年延長を決めた内閣が、わずか4カ月後に不適任と認めたようなものだ。お粗末なことである。そもそも定年延長が無理筋だったのではないか。

 政権に近いと目される黒川氏の定年延長を閣議決定した際、政府は国家公務員法の延長規定を根拠に挙げた。だが過去の国会で、その規定について政府は「検察官には定年延長が適用されない」と答弁している。

 野党に食い違いを追及されると、それを繕うように安倍晋三首相が「法解釈を変更した」と答弁し、森雅子法相も「口頭で決裁した」と述べた。

 閣議決定を正当化するために法解釈を変え、公文書作成を省き口頭決裁した―と開き直る。野党が「脱法的な手続きだ」と猛反発したのも無理はない。

 さらに、内閣が認めれば特定幹部をそのポストに残せる―という特例規定のある検察庁法改正案も「後付け」で提出した。世論の反発は大きく、今国会での成立を断念したばかりだ。

 不可欠な人材として、政府が強引に定年延長した黒川氏の不祥事。「責任を痛感している」と森法相は語ったが、検察幹部に居座らせた責任は重い。

 まずは賭博という違法行為を厳正に捜査、追及する必要がある。さらに政府は閣議決定までした経緯を国民に説明し、誤りだったと認めるべきだ。

 検察庁法改正案が成立すれば今回のように、時の政権の恣意(しい)的な判断で不適格な人物が居座り続けかねない。検察の独立性と信頼性を損なう。改正案は廃案にすべきだ。少なくとも特例規定は除外せねばならない。

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