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中国全人代 成果誇示では批判招く

2020/5/23

 中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)がきのう北京で始まった。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、予定から2カ月半遅れの異例の開催となった。

 李克強首相は施政方針に当たる政府活動報告で「感染症対策は、習近平国家主席を核心とする指導部の下、大きな戦略的成果を収めている」と自賛した。

 今回の全人代を、世界に先駆けてウイルスの抑え込みに成功し、社会、経済活動の正常化が進んでいるように国際社会へアピールする舞台と位置付けているのだろう。

 だが世界はまだ新型コロナの猛威に苦悩している。米国などは初動の対応について中国の責任を追及する姿勢を強めている。ウイルスの発生源はともかく、爆発的な感染拡大が中国から始まったのは紛れもなく、その事実は重い。

 外国へのマスクの提供や医師の派遣などが政治的な目的で利用されたとの指摘もある。それを成果として誇示するだけでは、むしろ批判を招く。国際社会の信頼を得るには、初動対応が後手に回った原因を徹底的に究明し、積極的に情報を公開する姿勢が求められる。

 政府活動報告で注目されていた2020年の経済成長率の目標だが、具体的な数値の設定が見送られた。全人代で目標を示せなかったのは極めて異例だ。

 新型コロナの影響で、中国の1〜3月の国内総生産(GDP)は前年同期比6・8%減と初のマイナス成長となった。先行きも不透明で4月以降のV字回復が見通せなくなっている。

 そんな状況下で、数値目標を設ければ、地方政府が無理に業績をアピールしようと公共投資を増やし、財政悪化を招きかねないと懸念したようだ。

 李首相は、財政赤字を増やし、インフラ投資のための地方債や特別国債を発行するなど、財政出動を拡大して景気を下支えする方針を打ち出した。

 強力なロックダウン(都市封鎖)と輸出の激減で、企業業績は悪化している。内需の低迷や貿易の不振、失業率の悪化など後遺症は深い。

 さらなる懸念材料は、11月の米大統領選をにらみ、中国に対して強硬姿勢を強めているトランプ政権との関係だろう。米中貿易摩擦が解決していない上、新型コロナへの対応を巡って対立が激化しているのは大きなマイナス要因である。

 米中両国は対話を通じて対立解消を図り、感染の収束と世界経済の立て直しのために協調する必要がある。

 きのうの全人代報告で、李首相は「香港で国家安全を維持するための法制度を確立する」ことも表明した。昨年夏から続く若者らによる反中、反政府デモを受け、コントロールを強めようとする動きだとみられる。

 各国が新型コロナの対応に追われる中、不意を突くように法整備を進める姿勢は容認しがたい。香港の民主派が「一国二制度」の形骸化を招くと猛反発しているのも当然だろう。

 全人代を控え、新型コロナで亡くなった人の遺族や支援者らによる政府の責任を追及する声がインターネット上から一斉に削除されたという。感染症対応の中で、民主化に逆行し、強権的な取り締まりを強める振る舞いは看過できない。 

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