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「リアリティー番組」の悲劇

2020/5/27

 スポーツ紙を久々に手にすると、早世のプロレスラー列伝が目に留まった。力道山は今や辞書にもある。広島のリングでたおれた「2代目タイガーマスク」三沢光晴さんは記憶に新しい▲そこに新たに連なる人が22歳とは痛ましい限りだ。遺書をつづって旅立った木村花さん。人気の陰る女子プロレスで「おしゃれなヒール(悪役)キャラ」と嘱望されていたという。追い詰めたのは1日100件にも上るSNS上の悪意の投稿だった▲男女6人が実際にシェアハウスで暮らす民放番組に出演していた。演技ではない、若者たちの心の揺らぎが見どころだろう。だが、ある時、木村さんが激高し、それを境に彼女の元に罵詈(ばり)雑言が▲「リアリティー番組」と呼ばれるジャンルに入る。海の向こうでは精神科医が出演者に付くほど、トラウマが残ることもあるという。テレビ局が防波堤になるべき反響を、生身の人間が一手に引き受けたとすれば、ネットの闇としかいいようがない▲政府高官も木村さんの死を悼んだ。何らかの規制が急がれるだろう。人をおとしめるのはリアリティーなのか、テレビ局にも聞いてみたい。リングの上の、華のある戦いではないことが悲しい。

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