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京アニ放火殺人で逮捕 凶行の全容、解き明かせ

2020/5/28

 アニメ制作会社、京都アニメーションのスタジオで昨年7月、36人が犠牲となった放火殺人事件で、京都府警はきのう青葉真司容疑者を殺人などの疑いで逮捕した。

 事件の発生から10カ月。家族を失った遺族らは無念さに耐えながら、心の痛みと向き合い続けている。なぜこんなことが起きたのか、捜査当局は凶行の全容を解き明かす必要がある。

 青葉容疑者は重いやけどを負い、現在もほぼ寝たきりの状態だという。府警は、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言も考慮しながら、勾留先の医療環境を整えて逮捕に踏み切った。

 青葉容疑者は「ガソリンを使えば多くの人を殺害できると思った」と容疑を認めているという。しかし、大やけどをして入院治療が必要だったため、ここまで逮捕が見送られた。捜査も思うように進んでいない。

 青葉容疑者は入念に下見を重ね、ガソリンや刃物などの凶器も用意していた。計画性がうかがえるものの、具体的な動機はなかなか見えてこない。

 事件直後に身柄を確保された際には、警察官に「小説を盗まれたから放火した」などと発言したとされる。実際、京アニの公募に応じ、複数の作品を出したものの、落選している。

 しかし、これほど多くの犠牲者が出た例を知らない。重大すぎる結果と釣り合わないとの指摘もある。これまでどう生きてきて京アニをなぜ狙ったのか。できる限り事件の背景を掘り下げることが求められる。

 京アニは「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」や「けいおん!」など、学園ものの人気作品を数多く手掛けてきた。独創性や緻密な背景描写に見られる高い表現力と作画技術で、日本だけでなく海外のファンを魅了してきた。

 それを支えていた人たちが犠牲になった。青葉容疑者がガソリンをまいて火を放ったスタジオの建物内には当時、70人がいた。1分ほどで煙が充満し36人が亡くなり、33人が重軽傷を負った。

 青葉容疑者は自身が起こした凶行の大きさをどう受け止めているのか。動機と犯行の結びつきについて問わねばなるまい。

 青葉容疑者は事件後、大阪府内の病院で高度治療を受け、昨年11月に京都市内の病院に転院した。リハビリに取り組んでいたが、現在もほぼ寝たきりの状態で、短期間に回復するのが難しいとみられる。

 それでも府警は逮捕に踏み切った。その理由については容体が回復傾向にあり、逃亡や証拠隠滅の恐れもあると説明している。しかし、まだ治療が必要で自力で自由に動けない容疑者の逮捕については、必要性を疑問視する専門家もいる。

 府警は今後、医師や看護師が常駐するなど医療態勢の整った勾留施設で取り調べに当たる方針でいる。容疑者の体調や治療状況への配慮はもちろん、録音・録画を行い、供述の信用性を担保することが欠かせない。

 京アニはきのう「会社としては当然、法の定めるところに従い、被疑者に対する刑事責任については最大限追及されるものと承知している」とのコメントを出した。

 遺族ら関係者が求めているのは、容疑者が起訴され、公判などを通じて真実が明らかになることだろう。

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