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他人行儀の効用

2020/5/29

 都市封鎖を強いるのではなく、外出自粛で第1波を乗り切った。わが国の現状は、感染爆発を招いた欧米からすれば、不思議でならないらしい。ハグの習慣がなく、一定の距離を置いてお辞儀を交わす。他人行儀がかえってよかったのか▲国際金融都市香港ではあいさつの流儀は人それぞれ。ウイルスを抑え込めたのは、むしろ「北京の言うことを信じないから」だとか。中国政府が発表しない頃から武漢の肺炎を人づてに知り、皆で警戒を強めたそうだ▲まさか意趣返しではあるまい。北京で開かれていた中国の全人代が、国家安全法制の香港への導入を決めた。一国二制度すなわち「港人治港」の約束を踏みにじって押し切る。そのやり口がまず信じられない▲言論や政治活動の自由を脅かす法制に、香港の若者が怒るのも当然だろう。なのに中国政府は抗議の動きを「政治ウイルス」と言い放ってはばからない。かの共産党で国家の安全とは、民を民とは思わないことなのか▲香港を擁護する米国を「政治ウイルスが拡散している」と批判したのも中国の外相である。恐れながら小欄が他人行儀の真意と効用をお伝えしよう。それは、相手に感染させない思いやり―。

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