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≪新型コロナ≫学生の就活 「氷河期」の再来、心配だ

2020/6/5

 来春卒業予定の大学生らの就職活動が、新型コロナウイルスの感染拡大のあおりを受けて混乱している。

 感染を防ぐために、企業説明会や面接がオンライン方式に切り替えられるなど、例年とは違う活動を強いられている。不慣れな対応に戸惑っている学生も少なくないだろう。

 とりわけ懸念されるのは、業績悪化を理由に採用を手控える企業が出始めていることだ。感染終息は見通せず、先行きの不透明感から採用抑制の動きが一気に広がる恐れもある。

 バブル崩壊後の就職難に翻弄(ほんろう)された「就職氷河期世代」を再び生むような事態は避けなければならない。多くの学生や若者が非正規で働かざるを得ない状況に追い込まれた。不安定な雇用環境は20年たった今も、社会の大きなひずみとなって残る。

 経済界と企業は、過去の教訓を生かさなければならない。厳しい経営環境下でも長期的な観点に立って将来を担う人材の確保に努めなければならない。

 今年は、経団連に代わって政府が日程ルールを要請した。3月から企業説明会を始め、今月から企業による面接など選考活動が解禁された。

 ただルールは形骸化している。インターンシップ(就業体験)などを通じて接触した学生を囲い込み、6月より前に面接など選考を進めてきた企業が多く見られる。

 就職情報会社によると、3月末までに内定などを受けた中国地方の学生の割合は16・3%で前年を6ポイント以上も上回り、学生の売り手市場とみられていた。ところが4月末時点は28・7%と前年を8ポイント強も下回ってしまい、明らかにペースが落ちた。

 説明会が始まる直前のタイミングで感染が全国に広がり、説明会や面接などを中止・延期にしたり、オンラインに切り替えたりする企業が相次いだためだ。感染拡大に伴い、企業の採用姿勢も慎重になった。

 直接対面しない形での面接では、きちんとしたやりとりができるかどうか、学生にも企業側にも戸惑いや不安があるのではないか。

 地方の学生にとっては、交通費や移動時間がかからないメリットもあるだろう。企業にとっても、遠方であろうと多様な人材との接点を増やす機会になるはずだ。

 一方、1度は直接会ってアピールし、職場の雰囲気を確かめたい学生もいるだろう。最終的な採否の判断は対面で決める企業も少なくないはずだ。

 互いの理解が不十分なまま入社すれば、早期離職のリスクが高まると指摘する専門家もいる。企業には、オンライン上であればなおさらのこと、面接の時間や機会を増やすなどしてコミュニケーションを深める努力が求められる。

 業績悪化が一気に進んでいるものの、大手企業では新卒計画を大幅に見直す動きはまだ少ない。それでもANAホールディングスや日本航空は採用活動を中断し、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の運営会社は採用自体を中止した。

 コロナ禍の長期化とともに、雇用の危機は現実味を増す。新たな格差や社会不安を生じさせないためにも、官民を挙げて既存の雇用はもちろん、若者の雇用を守る必要がある。 

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