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≪新型コロナ≫対策事業の委託 透明性の確保が不可欠だ

2020/6/9

 新型コロナウイルス対策事業で、中小事業者向けの持続化給付金や旅行などの消費を喚起するキャンペーン事業などを巡り、不透明な外部委託の問題が相次いで浮上している。

 多額の予算をつぎ込む事業にもかかわらず、資金の流れが不透明で契約や手続きにも疑念が広がる。コロナ危機には迅速かつ十分な対応が求められるのは当然である。だが予算は国民のお金である。説得力に乏しい、ずさんな使い方は許されない。

 政府は経緯や手続きを包み隠さず明らかにする必要があるが、消極的な姿勢ばかりが目立つ。このままでは国民の納得は得られるはずもない。政府の新型コロナ対策自体への信頼を失いかねないと自覚すべきだ。

 持続化給付金は第1次補正予算で2兆3100億円が計上された。収入が減少した中小事業者などに最大で200万円を支給する。所管する経済産業省は、電話相談や振り込みなどの事務業務を一括して一般社団法人のサービスデザイン推進協議会に769億円で委託した。

 民間企業のノウハウを生かせるなら、委託自体が悪いわけではない。だが協議会はその後、業務をそのまま大手広告代理店の電通に749億円で再委託し、「丸投げ」していた。

 さらに電通もグループ会社を通して人材派遣大手のパソナなど複数の企業に外注していた。多くの企業が絡めば、コストが膨らみ、利益が「中抜き」される恐れも高まる。政府は差額の20億円の使途や名目などを明らかにしなければならない。

 協議会は4年前に電通などが役員を出して設立した。1日時点で理事は8人いて全て非常勤。職員は21人しかいない。どのように業務全体を管理しているのか。巨額事業を託す相手として適切だったのかは疑問だ。

 なぜ電通に最初から委託しなかったのか。経産省は、過去の事業で電通が国の補助金の振り込み元になり、問い合わせが集中したからという。とても納得できる理由ではない。

 再委託や外注が何度も繰り返されると、事業の全体像を捉えにくくなる。税金が効果的に使われているかどうか、監視ししにくくなる。第2次補正予算案にも持続化給付金は1兆9400億円を積み増している。資金の流れを不透明なままにしておくことはできない。

 観光や飲食の消費を喚起する「Go Toキャンペーン事業」でも、外部への事務委託費の異例の大きさが問題視されている。1次補正で1兆6800億円が盛られたが、事務費の上限が3100億円と総額の2割近くを占めていたからだ。

 政府は、事務局を委託する事業者の公募を中止し、やり直すことにした。委託費を圧縮するのはもちろんだが、ここでも透明性の確保が不可欠だ。

 そもそもキャンペーンは、観光や飲食料金の割引が柱で感染収束後の需要喚起をもくろむ。流行の第2波が危惧される中、感染拡大をあおりかねず、ちぐはぐさが否めない。

 今優先すべきは景気悪化で仕事を失った人への生活支援や売り上げが激減した事業者への補償であり、治療薬・ワクチンの開発支援や医療物資の確保だろう。政府は緊急性の乏しいキャンペーン事業を見直し、巨額の予算を振り分けるべきだ。

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