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ちびまる子ちゃん

2020/6/10

 教育学者の斎藤孝さんに言わせれば、小学3年生は人生の黄金期なのだそうだ。確かに、わが身やわが子の小3時代を振り返ると、力むことなくのんきでいられた年頃だったような気がする。競争も格差もまだ意識していなかった▲そんな時代をほのぼのと思い出させてくれるのがこの小3だろう。ことしアニメ放映が始まって30周年の「ちびまる子ちゃん」。企画展を開催中の広島市中区のひろしま美術館を訪ねた▲ウイルス感染を防ぐため、密にならないよう入場制限をしながらではあるが、絶え間なく訪れる客層の幅広さに驚いた。親子連れはもちろん、祖父母世代や若い男性の姿も目立った▲原作者さくらももこさんが作品に投影したのは昭和50年頃である。だが古き良き時代の懐かしさだけが魅力ではあるまい。個性豊かな級友たちに時に絶句しながら受け入れていく小3の寛容さが、まるちゃんの世界にはある。いまコロナ禍で凝り固まった心を解きほぐしてくれる▲セル画や下絵が並ぶ展示の最後。さくらさんの自筆の色紙「ももこ心の俳句」が目を引いた。〈健康で明るく愉快にゆるやかに〉。ウイルスとの闘いで日常が遠のいているからこそ、胸に染みる。 

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