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≪新型コロナ≫地方の公共交通 即応支援で「崩壊」防げ

2020/6/11

 公共交通を担う事業者の多くが、コロナ禍で経営危機のふちに立たされている。

 とりわけ地方の痛手は大きい。中国運輸局によると、中国地方では交通事業者の4月の運送収入は昨年に比べ、高速バスで89%減、旅客船は68%減、タクシー58%減、路線バス43%減と軒並み落ち込んだ。人口減の上、不採算路線も抱える厳しい経営に追い打ちをかけられた格好といえる。

 緊急事態宣言で、一斉休校や在宅勤務、外出自粛が広がる中でも、社会資本として営業持続を望む政府の要請に応えてきた。その苦闘に対する世間の理解や共感も、これまで薄かったのは間違いない。

 緊急事態宣言は5月25日に解除されたものの、利用状況の回復は思うに任せないようだ。交通や経営の専門家でつくる一般社団法人日本モビリティ・マネジメント(MM)会議が5月中下旬に行った緊急アンケートがある。事業者の4社に1社は「7月には倒産」を予感し、半数が「8月には倒産」との危機感を持っているという。

 在宅勤務や分散登校といった生活が、どれほど定着するか。コロナ後を誰も見通せていないことが、経営の判断をさらに難しくしているのだろう。

 とはいえ今は「止血」が先決だ。実際、岡山市では先月末にタクシー会社が半数近い運転手約100人を解雇し、市内循環バスの運行会社で今月からの減便に伴い、運転手20人が解雇や自主退職に追い込まれている。

 MM会議の試算では、公共交通機関全体での減収額は最低でも3兆5千億円に上るという。とすれば、政府が第2次補正予算案で積み増す、3兆円規模の地方創生臨時交付金をどう活用するかが鍵を握るだろう。一刻も早く、行政と事業者が議論のテーブルに着く必要がある。

 現状把握に欠かせないデータは、研究者たちが提供しつつある。例えば、呉高専の神田佑亮(ゆうすけ)教授たちは、中国5県の鉄道やバスなど公共交通の運賃収入について、6月から交通需要が回復しても年間の減収幅は585億円と見積もっている。

 全国の自治体がどんな事業者支援をしているか。新たな事例を日々、研究者が特設サイト「新型コロナウイルスによる交通崩壊を防げ!」に挙げている。臨時交付金を申請する際の参考にもなるだろう。

 地域の生活や経済活動の「血管」である公共交通網が失われれば、副次的な影響は大きく、再建は難しい。利用者の私たち住民も、危機感を共有しておかねばなるまい。

 その点で、気掛かりがある。感染の不安が先立つあまり、公共交通機関に乗ることを恐れすぎてはいないだろうか。

 公共交通に1回乗った時に感染する確率は0・01%未満とのデータもある。乗客が安心して乗れるよう、事業者側も「感染しない・させない」乗車法をPRするべきではないか。

 MM会議は京都大ウイルス・再生医科学研究所の協力で、公共交通で感染を避ける三つの鉄則を提唱している。(1)常に換気(2)体が引っ付く満員車両に乗るのは避け、目・鼻・口は何が何でも触らない(3)しゃべるとしても、マスクをして小声で―。安全に乗り、支える。そんな意識を心掛けたい。 

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