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風と共に去りぬ

2020/6/13

 こんな映画を作る国には勝てない―。太平洋戦争中、進駐した東南アジアで敵米国の映画を見た軍関係者にはそう感じた人がいたという。中でも「風と共に去りぬ」には圧倒された。昭和の名匠小津安二郎もその一人▲1939年の作品は南部の白人社会が南北戦争で崩壊する中、たくましく生きる女性を壮大なスケールで描く。多くの部門でアカデミー賞を獲得した不朽の名作。一方で黒人奴隷の描き方が差別的だとの批判もあった▲完成時、舞台となったアトランタで祝賀イベントが開かれる。だが出演した黒人俳優は特別試写会に招かれなかった。肌の色で劇場が分けられていた時代。主人公の乳母役を演じた俳優は黒人初のアカデミー賞に輝くが、どんな思いでいたのだろう▲人種偏見を含む作品だ―として米国の動画サービス会社が配信を停止した。白人警官による黒人男性の暴行死事件を機に広がった抗議活動への対応。再開時は、歴史の考察や差別描写への非難など注釈を付けるという▲差別や侮蔑がのぞく古い映画や文学もある。年月を経ても根を張ってはいないか。私たちの社会や心を照らしながら鑑賞し、自問したい。差別は全て去りぬと言えるまで。

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