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【こちら編集局です】親がコロナ感染「障害のあるわが子の生活は」 後手の支援策、募る不安

2020/6/25

 親が新型コロナウイルスに感染したら、同居する障害のあるわが子の生活はどうなるのか―。不安を募らせる親の声が編集局に届いた。取材すると、広島県内の自治体の多くは、感染が分かってから考える後手の対応だと分かった。それでいいのだろうか。

 ▽備える自治体、少数派

 呉市の男性(72)と妻(71)の夫婦は、自分たちが新型コロナに感染したとき、一緒に暮らす46歳の知的障害のある息子の生活がどうなるのか心配でたまらない。1人で家に残されたら、息子はパニックを起こすかもしれない。食事も心配だ。読み書きや会話ができない息子は、食べ物の買い出しも外食もできない。

 「いざというとき、息子は公的な支援を受けられるんでしょうか」と男性は懸念する。

 男性が暮らす呉市の障害福祉課に聞くと、「親の感染が分かれば、家族構成や支援者が身近にいるかなど総合的に判断し、濃厚接触者の家族が施設に入所できないかなどを考える」という。男性に伝えると「それでは遅い。その晩の息子の寝床をどうするかは切実な問題。大まかな仕組みだけでも作っておいてほしい」と語気を強めた。

 取材を進めると、呉市と同じように支援策を事前に用意していない自治体が広島県内には多いことが分かった。感染判明を受けて対応するのは「障害の状態や家族構成などがケースごとに違う」というのが主な理由のようだ。

 それで本当にベストな対応を取れるのだろうか。

 福山市の苦い体験が、一つの答えになりそうだ。同市では3月初めごろ、障害のある子どもと暮らす両親のうちの一方に新型コロナの疑いが出た。子どもを誰がみるのか、という問題が急浮上した。

 市障がい福祉課は、残る一方の親が1人で何日間も介護するのは負担が重いと判断したが、子どもが普段利用しているショートステイ先からは受け入れを断られた。加藤啓介課長は「どうすればいいのか焦ったし、ばたばたした」と振り返る。結局、PCR検査の結果、親は陰性と分かり、事なきを得た。

 「受け入れる側も急に態勢を整えるのは難しいことを痛感した」と加藤課長。「事前に市と入所施設などの事業者が話し合うことが必要」と話す。

 一方、入念に準備している自治体も県内にある。東広島市は、障害のある家族がすぐ入所できるように、市内の障害者施設3カ所の協力を得た。万一の感染を避けるため、一般の入所者とは別棟に入ってもらう。泊まり込みで見守る支援者もほぼ確保した。障害のある家族が在宅を望む場合は、支援者が泊まり込みで日常を支える。

 全国ではより進んだ試みもある。事業者を「お金」で後押しするのは堺市。感染者の家族の障害者を支える訪問サービス事業者に、障害者1人当たり協力金15万円を支給する。訪問する支援者は感染の恐れがあるため別の仕事を控え、しばらくは自宅に帰らずホテル生活を送るかもしれない。そうした経済的な負担を補うという。市障害施策推進課は「サービスの形は事前に固めておかないとすぐ運用できない」と話す。

 県として対策を整えるのは神奈川県。短期入所できる施設5カ所を確保した。障害サービス課は「濃厚接触者の障害者をどの施設でも受け入れてくれるわけではない。調整には時間と労力が要る」と説明する。

 家族が突然、新型コロナに感染したときの備え、みなさんはどう考えますか。(治徳貴子) 

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