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ふるさと納税訴訟で国敗訴 制度見直し避けられぬ

2020/7/1

 ふるさと納税の新制度から大阪府泉佐野市を除外した総務省の決定がきのう、最高裁によって取り消された。

 新制度に参加する要件を定めた総務省のルールは違法で無効だと、最高裁は判断した。国の勝訴とした大阪高裁判決を破棄し、泉佐野市の逆転勝訴を言い渡した。

 指示に従わない自治体は容赦しないという国の姿勢が厳しく問われた。曖昧な権限で国が自治体を統制し続けることに一定の歯止めをかけた判断と言えよう。地方自治法を重視した判決で、評価できる。

 総務省は本来、地方分権の旗振り役のはずである。自治体とは「対等・協力」の立場であることを改めて肝に銘じ、制度の立て直しに取り組むべきだ。

 新制度は昨年6月にスタートした。豪華な返礼品で寄付金を集める自治体間の競争が過熱していたため、返礼品の調達費が3割を超すなどした自治体については、総務省の判断で除外できるようになった。

 泉佐野市は総務省の自粛要請にも従わず、高い還元率でギフト券を贈るキャンペーンを新制度が始まる直前まで展開し、多額の寄付を集めた。

 裁判では、法律改正前の寄付金の集め方に問題があったとして、除外を決めた判断の是非が最大の争点になった。

 泉佐野市は、新制度の内容を定めた改正地方税法について「将来の募集方法を判断材料とするよう求めており、過去の実績によって排除する権限は与えられていない」と訴えた。

 国側は「過去の実績を判断材料とすることには合理性がある」と反論したが、最高裁は移行前の募集実態を問題としたのは違法と判断し、除外処分は無効とした。

 とはいえ、泉佐野市の姿勢にも問題はあった。地元の関西空港に拠点を置く格安航空会社(LCC)の航空券購入に使えるポイントやネット通販大手のギフト券を目玉に、寄付集めをエスカレートさせた。

 新制度移行までの隙を突く形で、2018年度には500億円もの寄付を荒稼ぎした。最高裁判決も「社会通念上、節度を欠いていたと評価されてもやむを得ない」と指摘した。

 今回の判決で泉佐野市の制度復帰は確実となったが、「やり過ぎ」との批判を重く受け止めなければならない。

 08年度にスタートしたふるさと納税制度を巡り、税収の奪い合いをここまで過熱させた責任の一端は国にもある。15年に減税対象となる寄付の上限を2倍にした。お得感を強調する一方で、返礼品競争への対応は後手に回った。制度設計が甘かったことも否めない。

 返礼品に限らず、高所得者ほど有利になる仕組みや、ランキング形式で返礼品を紹介する仲介サイトなどの問題も残っている。高知県奈半利(なはり)町では制度を舞台にした贈収賄事件も表面化するなど、課題を抱える。

 大都市に集中する税収の一部を高齢化や財政難で疲弊する地方に振り向けるという制度の役割に異論はない。だが一部の自治体に利益が集中する制度のひずみを解消する必要がある。

 国は一方的に地方を従わせようとするのではなく、不満や批判を吸い上げ一緒に知恵を出し合う姿勢が求められる。

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