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平井伸治(ひらい・しんじ) 一人にさせない闘い

2020/7/22 8:00
平井伸治さん(鳥取県知事)

平井伸治さん(鳥取県知事)

 「命と健康を守る闘いを、今日より始める」

 4月10日夜10時。鳥取県内初の新型コロナウイルス感染の陽性を受けた対策本部でこう宣言し、感染を広げないため徹底したPCR検査等を展開する方針を決めた。

 この日のために「準備」を重ねてきた。

 高齢化が進み医療資源が潤沢でない本県に、高齢者の死亡例が多い新型コロナは危険だ。だが大学も病院も行政も住民も顔が見える絆が残る小規模自治体の特性を逆に生かせば、勝機はある。全国初の患者が出た1月半ばには相談窓口を開設。21日に庁内会議を発足。月末から県医師会と協議を始め、12床だった病床を322床まで拡大。厚労省のPCR検査対象が限定的過ぎると考え、2月7日から「必要性が高い場合」は本県独自に検査するよう改め、更に1日196検体まで検査体制を増強。人口当たりの病床数や検査能力は全国断トツ1位となった。

 陽性患者については、濃厚接触者に限らず1日最多141件PCR検査を実施するなど、感染拡大を直ちに抑える戦略をとってきた。県民の予防意識と医療関係者等の協力のたまものと感謝に堪えない。

 本県でも飲食・観光・製造業等に深刻な影響が広がり、現場主義の対策が急務だ。

 国に先駆け1月に始めた県融資を保証料なし・無利子に順次拡充。3月には金融機関の協力を仰ぎ、初動での資金供給につながった。休業の有無を問わず店舗を一律に助成し、県独自ガイドラインも設け、衛生対策を実践する「協賛店」は千店を超えた。文化芸術支援や高校野球等の代替大会実施も、全国の先頭を切って表明した。県民には「人と人 間(あいだ)が愛だ」「三つもの密だとミスだ」「幸せは予防で呼ぼう」の「新型コロナ克服3か条」を呼び掛けている。

 新型コロナとの闘いは、患者一人の闘いではない。地域の絆が成否を決める。

 「咳(せき)をしても一人」

 尾崎放哉(ほうさい)の名句だが、そんな孤立を作るまいと、県を挙げた闘いは続く。(鳥取県知事)

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