「原爆の日」特集

「内部被曝判断、歴史的な瞬間」 「黒い雨」訴訟、広島大・大滝名誉教授ら識者の話

2020ヒロシマ2020/7/30 14:42
集会で判決の受け止めを話す大滝名誉教授

集会で判決の受け止めを話す大滝名誉教授

 「初めて司法で正面から内部被曝(ひばく)が判断された。歴史的瞬間だ」。広島大の大滝慈(めぐ)名誉教授(69)=統計学=は29日、全面勝訴にわく原告が開いた集会で力強く宣言した。

 「黒い雨」の放射性微粒子を、呼吸や井戸水、食べ物などを通じて体内に取り入れてしまう内部被曝を研究。黒い雨を巡る2008〜10年の広島市の調査に協力し、国が援護対象とする大雨地域の約6倍の広さで降ったと推定した。

 原告のよりどころとなった「大滝雨域」。判決文はデータ数の不十分さなどを指摘しつつ、黒い雨が降った地域の推定では「相応に斟酌(しんしゃく)できる」とした。「そう捉えてもらえれば十分。ほっとした」と表情を緩めた。

 判決文は、黒い雨による健康被害を評価する際に、内部被曝の可能性を検討する必要があるとも説いた。内部被曝の問題は、東京電力福島第1原発事故などでも指摘されている。

 「被爆から75年。内部被曝は科学的にもっと研究されなければならなかった。すぐにとはいかないかもしれないが、今回の判決が、危険性を見直すきっかけになればいい」(新山創)

 ▽「証言で広く認定、評価」 広島大の田村和之名誉教授(行政法)の話

 被爆者の認定の在り方を根底から改めるよう国に迫る判決だ。被爆直後の調査が不十分だったこともあり、雨に含まれる被曝(ひばく)線量を立証するのは困難。雨量で援護対象区域を決めるのではなく、原告の証言を基に広く被爆者と認定した点は大いに評価できる。公平な被爆者認定に向け、判決を踏まえた新たな基準を速やかに定めることが必要だ。線引きを明確にするのが難しい場合、被爆者の不利にならないようにできるだけ援護対象区域は広く取るべきだ。

 ▽「被曝線量で線引きを」 東北大大学院の細井義夫教授(放射線生物学)の話

 これまでの科学的な研究に基づけば、黒い雨による被曝線量が人体の健康に与える影響は極めて低いといえ、国の援護対象区域の線引きは基本的に正しい。ただ影響がゼロとはいえず、今回の判決は被爆者援護法が規定する「身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」という文言を原告の立場に立って解釈し、被爆者と認める判断を下したのだろう。国は同法のあいまいな表現を改め、被曝線量に基づいて明確に線引きするべきだ。

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