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≪新型コロナ≫お盆の帰省 自己責任では無責任だ

2020/8/8

 今年の夏は帰省していいのか、控えた方がいいのか。悩んでいる人も多いだろう。新型コロナウイルスの感染が再拡大する中、お盆の帰省シーズンがやってきた。

 この時期にしか帰省できない人や、家族の事情でどうしても帰らざるを得ない人もいるだろう。帰省する場合は、感染予防対策に万全を期すなど、一人一人が自覚を持って行動する必要がある。

 7月に入ってから新規感染者は増え続けている。特に東京都や大阪府、愛知県、福岡県など大都市圏では1日当たりの過去最多を更新し、深刻さを増している。県境をまたいだ移動に伴う感染の広がりも目立つだけに、地方の危機感は強い。

 例年ならお盆は多くの人が、家族や親戚、友人らと再会する機会となる。一方で、祖父母や両親ら高齢の親族と接したり、飲食・飲酒を共にしたり、感染リスクは高まる。

 とりわけ重症化しやすい高齢者への感染の広がりは避けなければならない。入院患者が増えれば、医療体制の逼迫(ひっぱく)につながるからだ。

 実際、各地で病床の使用率は上昇している。沖縄県では知事が医療崩壊に危機感を示すほど病床数に余裕がなくなっている。広島県ではまだ余裕はあるが、使用率は4割近くまで急伸している。

 医療体制が脆弱(ぜいじゃく)な地域を抱える地方で、都市部から大勢が移動してくる帰省や旅行に懸念が広がるのも無理はなかろう。

 全国の知事からは自粛や慎重な対応を求める発言が相次ぐ。東京都の小池百合子知事は「この夏は特別だ」とした上で、都外への旅行や帰省を控えるよう都民に求めている。中国地方5県の知事も連名で「今すべき移動かどうか、もう一度考えて」と訴えた。

 感染拡大に歯止めをかける対策が必要になっている局面だと考える知事らは多い。にもかかわらず、政府の動きは鈍い。こうした認識の温度差も、国民の戸惑いや混乱に拍車を掛けているように映る。

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長はお盆の帰省について、十分な対策ができない場合は、慎重な判断を国民に促すよう政府に提言したことを明らかにした。

 これに対し、安倍晋三首相はおとといの会見で「帰省する際は高齢者の感染防止に十分注意してほしい」と述べただけで、一律の自粛は求めなかった。懸念の声が多い観光支援事業「Go To トラベル」については継続する考えを示した。

 経済活動を重視する姿勢を鮮明にするならば、どう感染の拡大防止を両立させていくのかも説明するのが筋ではないか。

 お盆は日本の風土に根付いた年中行事であり、観光旅行の是非と同列には論じることはできない。地域によって感染の状況は異なる。帰省をするかどうかは最終的にはそれぞれの家族が話し合って決めるしかない。

 それでも何の見解も示さず、「自己責任で」という無責任な態度には違和感を覚える。自己責任論が強まれば、帰省に踏み切った人への差別や中傷を招きかねない。そうした事態を避けるためにも、政府は、お盆の帰省について明確なメッセージを発信するべきだ。 

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