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NHKの経営計画案 「公共」の責務を果たせ

2020/8/9

 NHKが来年度から2023年度までを期間とする次期経営計画案を発表した。新たな受信料の値下げは見送る一方、チャンネル数の削減など、事業縮小方針を強調した内容である。

 「肥大化」を指摘されていたNHKが、無駄な経費を削ることについて異論はない。しかしチャンネル削減はサービス低下につながらないか。受信料で成り立つ「公共メディア」を名乗るならば、その名にふさわしい計画にせねばなるまい。

 今回の計画案では、構造改革の実施によって3年間で支出を630億円程度減らす方針を示した。

 現在2チャンネルあるラジオのAM放送を一つに統合するという。衛星放送も4チャンネルのうち「BS1」と「BSプレミアム」を統合し、将来的には高精細画質の「BS4K」を含めて一つにする方針だ。

 NHKはこれまで膨大な受信料収入などを背景に、チャンネル数を増やしたりテレビ番組のインターネット同時配信も始めたりして事業を拡大してきた。大幅な規模縮小を打ち出した今回の計画案は、支出を削減するという点では、各方面から支持されるかもしれない。

 しかしAMラジオは、災害時などには大切な情報源である。ラジオ語学講座などの教養番組も、NHKならではの特色と言える。衛星放送も国際ニュースや良質なドキュメンタリーなどが高く評価されてきた。削減内容や理由を視聴者に説明し、理解を得ねばなるまい。

 気になるのは、事業を縮小して経費削減方針を示しながら、民間と競合する子会社の改革や新たな受信料値下げについては踏み込んでいないことだ。納得できない人もいるだろう。

 NHKは放送法に基づき、公共放送を担う特殊法人である。法人税を払う義務がない一方で、年7千億円を超える受信料収入を得ている。民間では代替えできない業務が求められているのに、昨今は民放と手法の似た番組も少なくない。民放から「民業圧迫」との声が上がるのも当然だろう。

 それらをまず精査すべきだ。チャンネルを削減すればいいわけではない。報道を中心に地域の民主主義を支える役割を果たす地方放送局の存在も重要だ。

 「公共」の役割を明確化する必要がある。「公共放送」から「公共メディア」への進化を目指すというNHKが今後どんな役割を果たしていくのか。その将来像を描くことこそ求められている。

 テレビを持たない人が増え、映像のネット配信のニーズも高まっている。メディアを取り巻く環境が激変する時代に果たすべき役割を示した上で、具体策を示すのが筋だろう。

 今春からテレビ番組のネット同時配信を始めた。ネットでの業務を今後も拡大していくのなら、テレビの受信契約をせずにネットだけで番組を視聴している人にも受信料の支払いを求めていくのか。受信料を巡る根本的な議論も始める必要があるのではないか。

 経営計画案については、パブリックコメント(意見公募)を実施し、本年度中に正式に決めるという。視聴する側のニーズとずれては公共放送は立ちゆかない。国民からの信頼を得られる計画となるよう求める。

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