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三原・安芸高田市長選 対話重ね、政策実現せよ

2020/8/11

 おととい投開票の三原市長選と安芸高田市長選で、いずれも政治経験の全くない30代の無所属新人が当選した。

 どちらも昨年7月の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で、前法相で衆院議員の河井克行被告=広島3区=からの現金受領を認めた前市長の辞職に伴う選挙だった。

 前市長2人は当初、そろって受け取りを強く否定していた。そうした政治家の「うそ」に対する不信感が高まる中での選挙戦となり、「政治とカネ」の在り方に対して有権者の厳しい視線が注がれた。

 本来、政治や行政の経験は選挙を戦う上では大きな強みになるはずだが、今回はそうはならなかった。むしろ古い体質やしがらみの象徴のように受け止められたのではないか。有権者は刷新と変革を求め、若さに期待したのだろう。

 三原市長選では、35歳の教育団体代表の岡田吉弘氏が元市議ら3人を退けた。自民党の推薦を受け、組織力を生かした。中国地方では最年少、全国でも2番目に若い市長になる。

 一方、安芸高田市長選では、地元出身で37歳の石丸伸二氏が告示直前に銀行を辞めて立候補。41年間の行政経験を持つ前副市長との一騎打ちを制した。

 両市長選では、どの候補も市政の信頼回復を掲げたため、かえって政治とカネの問題へのスタンスの違いが見えにくくなった。その中で、30代という2人の若さは「市政刷新」の主張に説得力を持たせ、清新さや世代交代を求める有権者の受け皿になったと言える。

 行政手腕は未知数だが、新しいリーダーになったからには、「経験不足」は言い訳にはできまい。両市とも財政難が重くのしかかり、少子高齢化がもたらす難題が山積している。

 暮らしやすさをどう高めていくのか。政策を実現していく突破力が求められる。市民はもちろん、市議会や職員との対話を重ね、一つ一つ実績を積み上げていくしかない。

 残念だったのは投票率が下がったことだ。新型コロナウイルスの影響による制約もあったのだろうが、三原市長選は2017年4月の前回より8・83ポイントも下がった。安芸高田市長選も直近で選挙戦となった16年4月を1・37ポイント下回り、新市になってからの最低を記録した。

 三原市長に就く岡田氏は、政治不信を払拭(ふっしょく)するために情報公開の徹底を公約に掲げていた。一刻も早く実現に取り組み、市政の求心力の回復を急ぎたい。

 事件を巡っては、検察当局が克行被告と参院議員で妻の案里被告による現金の配布先としたのは100人で、うち40人が首長や議員だった。

 安芸太田町と三原、安芸高田市の3首長だけでなく、現金授受を認め、辞職する議員も相次ぐ。現金を受け取った議員らに説明責任を求めて市民グループが署名活動に乗り出すなど、事件の影響は収まっていない。

 政治不信の元凶は、大規模買収を招いた広島県政界の体質自体ではないか。河井夫妻の裁判が始まれば、これまで受領を明らかにしていない関係者の名前が出てくるかもしれない。

 現金を受け取った議員は司法任せにするのではなく、政治家の責任として自ら事実関係を明らかにすべきだ。

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