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少年法改正の法制審案 立ち直り、妨げるのでは

2020/8/12

 18〜19歳は中間層としてその上下の世代とは異なる扱いをすべきである―。少年法の適用年齢引き下げについて議論する法制審議会(法相の諮問機関)の部会が骨子案をまとめた。

 先月末に自民、公明両党が先行してほぼ同じ内容の案で合意している。これまで法制審では賛否が割れていたにもかかわらず、政治に主導される格好で、諮問から3年半を経て意見集約しようとしている。

 18〜19歳が罪を犯した場合、いったん家裁に送致し、家庭の事情などを調査する仕組みは維持するという。その一方で家裁から検察官に送致(逆送)し、大人と同じ刑事手続きを取る犯罪の範囲を広げて厳罰化を図るようだ。本人を特定する報道も解禁するという方針は、立ち直りを妨げる懸念もある。

 民法上の成人年齢は2022年4月に18歳へと引き下げられる。少年法改正を巡る議論は、選挙年齢や成人年齢に合わせるかどうかが焦点となってきた。

 成人年齢の整合性を図るというが、刑罰より教育と更生を重視してきた少年法の趣旨を尊重すべきではないか。

 少年犯罪は減少傾向にある。少年院で矯正教育を施せば大人になっての再犯を抑える率が高まるとの統計もある。少年法は一定の役割を果たしているといえる。拙速を避け、慎重に議論せねばならない。

 18〜19歳は民法上は成人にはなるものの、いまだ成長過程にあって可塑性に富む―。法制審部会の議論でもそう確認している。少年法適用年齢の引き下げを事実上見送り、全ての事件を家裁に送致する現行の枠組みを維持したのは当然だろう。

 同時に、厳罰化を図るという。現行法では家裁から検察官に逆送するのは故意に人を死亡させた重大事件に限っている。部会案は18〜19歳についてはこれに強盗や強制性交、放火などへと広げるという。

 自公が合意するや早速、その案を追認するかのような取りまとめにも疑問が残る。

 さらに起訴後に実名報道を可能とすることは、立ち直りの妨げとなりかねない。これまでも一部週刊誌などが少年事件を実名で報道したことはある。だが最近はスマートフォンやSNSの普及も相まって実名が出回ることの影響は計り知れない。

 名前の特定はもちろん顔写真などをさらすといった行為は加熱する傾向がある。誤った情報を含め、少年の情報がひとたびネット上に流布してしまえば、訂正や削除が困難であり、拡散も阻止しにくい。更生にとって、大きな支障となるのは間違いあるまい。

 少年の社会復帰を極めて困難にするとして、日弁連は法制審の部会案に、反対の声明を出している。「少年法の趣旨を没却し、その機能を大きく後退させるもの」と強く批判している。

 逆に適用年齢の引き下げと厳罰化を求める声もある。少年事件の被害者遺族の団体は「選挙権を与える以上、刑罰を受ける責任も自覚させるべきだ。犯罪の抑止にもつながる」という。被害者感情も理解できる。

 依然、意見が割れたままの論点や懸念される問題点が多くある。にもかかわらず政府はなぜ少年法改正と改正民法の同時施行にこだわるのか。改正ありきの議論で決めてはならない。

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