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御巣鷹山と生きる

2020/8/13

 猛暑をしのぐ手に「緑のカーテン」がある。ヘチマにゴーヤーは定番だろう。35年前の夏、美谷島健(みやじま・けん)君はヘチマ観察に熱中していた。「ぼうを立てても、どんどんのびるのでこまる」と日記の最後にある▲その翌日「ちびっこVIP」の名札を胸に一人で日航機に乗り、帰らぬ人に。両親は何度も群馬に通い、少しずつ健君との「再会」を果たした。変わり果てた足と手の、わずかな部分だったが「天国で大好きだった野球ができるね」。母邦子さんの手記「御巣鷹山(おすたかやま)と生きる」から▲邦子さんが世話する8・12連絡会は「遺族」の文字を冠しない。ただ悲しみに暮れるのではなく日航とボーイング社の責任を問うと―▲だが、ボ社は近年も製造責任が問われる墜落事故を起こす。日航も今や、事故を知る社員は4%に満たない。あろうことか、日航を含む航空各社でパイロットの飲酒不祥事が相次いだことは記憶に新しい。修理ミスという緩みが大惨事を招いたのに▲墜落の瞬間、一人旅の健君の手を握ってくれたかもしれないお姉さんがいた。邦子さんは彼女の母親と出会って「ひとりではなかった」と気付き、われに返る。悲嘆のさなかの、人の縁を思う夏でもある。

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