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香港の言論弾圧 許されぬ民主派つぶし

2020/8/14

 香港の民主派や報道機関に対する弾圧を、中国が本格化させている。「一国二制度」の有名無実化がいよいよ現実のものとなり、深く憂慮される。

 活動家の周庭氏や、中国に批判的な香港紙「リンゴ日報」などのメディアグループ創業者である黎智英氏らが逮捕された。警察当局は香港国家安全維持法(国安法)違反の疑いとするだけで、具体的な容疑事実を明らかにしていない。その後、全員を保釈したものの、民主派に対する中国の強硬姿勢がむき出しになったといえる。

 国安法の名の下に進められる「民主派つぶし」である。周氏らの逮捕も見せしめで、中国に盾突けば拘束も辞さないという脅しなのだろう。報道の自由や抵抗力を奪い去り、従わせる狙いは明らかだ。決して見過ごすわけにはいかない。

 中国の治安維持体制を香港に持ち込む国安法は6月末、中国により一方的に制定、施行された。その反発から民主派の躍進が予想された9月の立法会(議会)選挙も、コロナ感染拡大を理由に1年延期された。警戒した中国の身勝手な介入だろう。

 民主の女神。そう称される周氏は、6年前の民主化を求める「雨傘運動」で注目された。その後も政治団体「香港衆志(デモシスト)」などで活動した。中国批判の論陣を張る黎氏は、警察にマークされてきた。

 2人のような著名人を狙い撃ちし、民主化活動の勢いをそぐ思惑が透ける。逮捕の際、周氏のパソコンや携帯電話、パスポートまで押収している。黎氏の新聞社では、記者の取材資料なども調べており、報道の自由も抑え込むつもりらしい。

 なぜ中国は暴挙に出たのか。国安法などを巡って、民主派の動向とともに国際社会の反応に神経をとがらせているからだ。

 香港メディアによると、周氏の逮捕容疑は、香港に制裁を加えるよう、インターネット上で外国政府に働き掛けたことだという。香港警察は、容疑事実が国安法可決後もなされたと強調している。国安法が外国人も摘発対象とするとしていることもあり、国際社会から非難が高まることを中国は恐れたのかもしれない。

 実際、欧米諸国は動き始めている。国安法施行を受け、英国やドイツ、オーストラリアが香港との犯罪人引き渡し条約を停止した。台湾も非難しているほか、貿易などで中国と対立する米国は批判を強め、香港に対する優遇措置を撤廃している。

 民主派弾圧が逆効果であることを中国に分からせるため、国際社会は市民も含め、批判や抗議を強めていく必要がある。

 香港では、民主派支援の動きが広がった。黎氏の新聞を買い支える運動が市民に広がり、グループの株価も急騰したという。国内外から周氏に激励のメッセージが寄せられている。

 日本はどうか。周氏らの逮捕に、菅義偉官房長官は「重大な懸念」を表明。「関係国と連携し、適切に対応する」とした。

 独学したという日本語を流ちょうに操る周氏は保釈後、「引き続き香港のことに注目してください」と訴えた。政府には、しっかり応えてもらいたい。

 人権を侵害する香港政府や中国に対し、言論の自由を守るよう、国際社会とともに粘り強く働き掛けねばならない。

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