【こちら編集局です】「新型コロナ『第2波』もう来ているのでは」 認めぬ国、経済に配慮か
▽グラフ上では第1波超え
新型コロナウイルス感染症の「第2波」はもう来ているんじゃないですか―。そんな声が編集局にいくつも届いている。19日には日本感染症学会の舘田一博理事長が「第2波のまっただ中」と発言。中国地方でも、第2波の到来をにおわせ警戒を呼び掛ける知事がいるが、国は明言しない。なぜ、共通認識にならないのだろう。
中国5県が確認した感染者数をグラフにすると、7月初めから二つ目の山が現れる。見た目は明らかに「第2波」だ。どの県も感染者の累計は、7月以降が6月までを上回り、より大きな波が打ち寄せているように映る。だからなのか、各県の知事会見ではこのところ、第2波についての言及が相次いでいる。
山口県の村岡嗣政知事は7月31日に「感染状況を見れば事実上の第2波だろう」。岡山県の伊原木隆太知事も25日に「後から振り返って第2波だったとなってもおかしくない」と発言。島根、鳥取の知事も第2波ではないかと推測する。
一方、県行政としては5県とも第2波という言葉を使っていない。広島県は、湯崎英彦知事が7月28日の会見で「定義が明確でない中で『第2波』『第2波でない』という議論は意味がないと思う」と話しており、国が決めれば従うという構え。他県も「国が言っていないのに、県が第2波とは言えない」(山口県)と国に判断を委ねる。
では、国はどう考えるのか。内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室に尋ねると「『第2波』は使っていない。定義も持っていない」と素っ気ない。「病床の逼迫(ひっぱく)具合や療養者数などの指標を基に、専門家に意見を聞いて判断することになるだろう」と言う。
なぜ、第2波が来ていると言いにくいのか。広島大大学院の匹田篤准教授(社会情報学)は、「第1波という言葉に結びついたイメージが呼び起こされるからかもしれない」と見立てる。「第1波と同じように外出自粛要請などの政策を取るべきだと捉えられかねないから、第2波という言葉を使いたくない人もいるのだろう」
広島本通商店街振興組合(広島市中区)の小川嘉彦理事長は「第2波という言葉は必要以上に不安をあおる可能性がある。また経済活動が止まってしまうと困る」と懸念する。
社会が言葉に振り回されないためにはどうすればいいのか。匹田准教授は「第2波という言葉をただ避けるのではなく、地域ごとに今がどんな状況でどんな政策が必要かを丁寧に説明することこそ、安心を生みだすことにつながる」と強調する。感染症に向き合う上で大切なのは「正しく怖がる」こと。そのために必要な情報とメッセージの出し方が今、問われている。(衣川圭、田中美千子)
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