【激震 前法相夫妻公判】検察、「被買収」100人次々と 克行被告、語気強め否認
「当選のため現金を渡したことはない」。昨夏の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件の初公判で25日、前法相の河井克行被告(57)=衆院広島3区=と妻の案里被告(46)=参院広島=が無罪を主張し、検察との対決姿勢を鮮明にした。一方、検察側は「厳しい選挙情勢を予想し、現金を提供した」などと強調。被買収者100人の名前や金額を次々と法廷で読み上げた。異例ずくめの「百日裁判」が幕を開けた。
午前10時すぎ、東京地裁で最も広い104号法廷。マスクを着けた両被告はいずれも黒っぽいスーツ姿で入廷し、無言で被告人席へ。互いに目は合わせない。逮捕前より痩せた感じの克行被告。案里被告は両手を強く握りしめていた。
裁判長から人定質問で職業を尋ねられると、克行被告ははっきりした口調で「衆議院議員です」。一方の案里被告は傍聴席からは聞き取りづらい声で「参議院議員です」と答えた。
▽なりふり構わず
続く罪状認否では、2人とも冒頭で支援者らに対し「ご迷惑をお掛けした」と謝罪。深々と頭を下げた後、書面を読み上げ、起訴内容を否認した。克行被告は「選挙運動を依頼する趣旨で供与したものでない」とのくだりになると、語気が強まった。案里被告も「夫と共謀したことはない」などと訴えた。
検察側は冒頭陳述で、自民党本部の主導で参院選への案里被告擁立が決まった経緯に触れ「党広島県連が党本部の方針に強く反発し、案里被告を支援しない方針を打ち出し、(克行被告は)選挙戦が非常に厳しいものになると予想した」と指摘。「付き合いのあった議員や疎遠だった議員にもなりふり構わず現金を供与することにした」と述べた。
さらに検察官3人が入れ替わりながら、被買収者とされる県議や市町議、後援会員ら100人の実名を法廷で列挙。起訴内容に沿った現金授受の時期や場所などを明らかにした。
検察側の冒頭陳述は1時間余り。克行被告は熱心にノートにペンを走らせ、案里被告は身じろぎせずに伏し目がちに聞き入っていた。
▽寄付行為を主張
続いて弁護側が冒頭陳述。克行被告の弁護人は現金配布について「地盤培養行為の一環で、政治信条が同じだったり、将来有望だったりする地元政治家に寄付した」と反論。案里被告の弁護人も政治家同士の寄付行為だったとした上で、現金を受け取ったとされる地方議員に関し「検察官との間で起訴されないとの約束の下、(買収目的を認める)供述調書が作成された」と訴えた。
今後は週3、4回ペースで審理が続き、100人超の証人尋問が予定される。自民党本部が参院選前に両被告側に1億5千万円を送金していたことが判明するなど「選挙とカネ」の問題にも注目が集まる。
東京地裁ではこの日、開廷2時間前から429人が傍聴券を求めて並んだ。法律を学ぶ日本大3年深沢瞬さん(21)は「1億5千万円の使い道を含め、分からないことが多い。政治の闇を明らかにしてほしい」と真相解明に期待を寄せた。(中川雅晴)
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