【こちら編集局です】登下校の日傘なぜ駄目 厳しい残暑の中「小2の娘に持たせたい」
「小学生の娘が通学する時に日傘を持たせたいのですが、学校から駄目と言われました」。広島市内の40代会社員女性から、こんな声が編集局に届いた。厳しい残暑の中で通学する子どもたち。なぜ日傘を差すことが許されないのだろうか。
▽各校判断 議論深める必要も
女性の長女は2年生。毎日、片道30分近く歩いて学校に通う。下校時は午後2〜3時。汗だくで、顔を真っ赤にして帰って来るという。女性は「熱中症で倒れないか心配。一日も早く認めてほしい」と訴える。
学校に問い合わせると「日傘の持参は禁じてはいないが、勧めてはいない」との回答。それでは保護者は日傘を子どもに持たせにくいだろう。校長は、日傘を差すと児童の視界が遮られ、交通事故に遭う危険性が高まると懸念する。「通学路の場所によっては子どものそばを大型車がかなりのスピードで走る。熱中症の危険性もあり悩ましいが、一律に推奨できない」
広島市教委によると、登下校時の日傘の使用許可は「各校の判断」。調べてみると、日傘を差すことを勧めていない市立小学校は他にもあった。「晴れた日に傘を持っていると、子どもが振り回す恐れがある。目に入るなどしたら大変」「経済的にどの家庭も日傘を買えるわけではない」などと理由を説明した。
一方、今夏から日傘の持参を認めた小学校もあった。新型コロナウイルス感染拡大による夏休みの短縮で、暑い盛りの8月に授業をしたからだ。千田小(中区)は、帽子などとともに日傘の活用を呼び掛けた。森川康男校長は「傘の扱い方は日頃から指導している。長期の臨時休校で児童の体力低下が懸念される中、命を守ることを優先した」と話す。
幟町小(同)は夏休み明けの8月24日の登校から認めた。同月上旬に日傘の使用に関する通知を出し、交通ルールを守るなどの注意事項を添えた。新田美穂教頭は「登下校時に児童がソーシャルディスタンス(社会的距離)を取る一助にもなる」と強調する。
全国各地では、教育委員会が率先して日傘の使用を勧めているケースもある。
兵庫県稲美町教委は今夏、町立5小学校の全児童約1700人に貸し出す日傘を購入した。埼玉県熊谷市教委は6月、全市立小中学校に登下校時の雨傘の活用を呼び掛けた。家庭の経済的な負担も考慮して雨傘としたが、日傘でも良い。同市教委は「カラフルな傘ならよく目立ち、車からも見えやすいはず。使い方は日頃の指導で対応できる」と指摘した。
子どもは身長が低いため地面からの照り返しを受けやすく、体温調整機能も未発達で熱中症になりやすいとされる。温暖化を背景に夏の暑さが年々厳しさを増す中、大人の目が届きにくい登下校時の子どもの健康をどう守るのか。新型コロナの影響による一時的な問題と捉えず、教育委員会や学校現場、保護者たちで議論を深める必要がある。(小林可奈)
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