コラム・連載・特集

【激震 元法相夫妻公判】「買収の意図」証言次々 3県議、検察の主張に沿う

2020/9/19 22:57

 昨年7月の参院選広島選挙区の大規模買収事件で、元法相の河井克行被告(57)=衆院広島3区=と妻の案里被告(46)=参院広島=から現金を受け取ったとされる「被買収者」の証人尋問が東京地裁で始まり、自民党の広島県議3人が検察側の証人として出廷した。いずれも現金は買収の意図で渡されたと証言。検察側の主張に沿う内容だった。買収の意図はなかったと訴える弁護側は捜査段階の供述の信用性を争い、尋問で検察側の立証を崩したい考えだ。一方で克行被告は弁護人を解任し、公判が中断。波乱の幕開けともなった。

 100人いる被買収者の証人尋問は16日から始まった。18日までの3日間で、計200万円を受け取った奥原信也県議(78)=呉市、50万円を受領した下原康充県議(69)=東広島市、30万円の平本徹県議(54)=安芸郡=が出廷。「票を集めてほしいのだと思った」「(現金の趣旨に関する案里被告の説明が)ころころ変わった。選挙のための違法な金」「危ない金。もらってはいけない金と思った」と述べ、票の取りまとめを求める趣旨だったと証言した。

 いずれも昨年4月の県議選中に現金を渡していたことから、両被告は「陣中見舞いや当選祝いだった」と主張している。しかし3県議は以前の選挙などで金をもらったことはなく、両被告から提供された現金が通常の陣中見舞いや当選祝いよりかなり高額だったと反論。領収書を求められることもなかったため、買収目的と受け止めたという。

 関係者によると、3県議は事前に東京地検などで入念に打ち合わせを繰り返した上で本番に臨んだ。このため法廷では、検察官とのやりとりがスムーズに進む場面が目立った。

 ▽別の趣旨と反論

 一方の弁護側は反対尋問で、案里被告からの現金提供が、選挙で支援するかどうかの意思決定につながったかを質問。「現金提供がなくても、元々(案里被告を)支援するつもりだった」「支援したのは、現金提供の影響とは関係ない」との証言を引き出した。弁護人は「金銭の授受にかかわらず応援したのは、別の趣旨で現金を渡したという見方につながる」と尋問の狙いを明かす。

 このほか弁護側は、検察当局が被買収者の刑事処分をしていない点を問題視。初公判では、被買収者を任意聴取した際に起訴しないと約束し、利益誘導で自白を得たとして捜査の不当性を訴えた。3県議への尋問でも聴取の状況をただしたが、3県議は「刑事処分について検察から何も言われていない」などと弁護側の主張を否定した。

 ▽判決日程影響か

 両被告は当初、同じ法廷で併合して審理されていたが、15日の克行被告の弁護人解任に伴い、東京地裁が16日に両被告の公判を分離。3県議が出廷した16〜18日の公判は案里被告だけが出席した。

 両被告の公判は、迅速に審理する「百日裁判」として12月18日までに55回の期日が決定しているが、克行被告が新たな弁護人を選任して準備が整うまでは中断するとみられ、案里被告の審理が先行する見通しだ。

 「弁護人が決まっても、検察、地裁との事前協議だけで相当な時間がかかる」と検察幹部。年明け以降と見込まれていた判決はさらに遅れる公算が大きい。(中川雅晴、河野揚)

 <クリック>参院選広島選挙区の大規模買収事件 起訴状によると、河井克行被告は昨年3〜8月、妻の案里被告を当選させるために地方議員や首長、後援会員ら100人に計2901万円を渡し、うち5人については案里被告と共謀して計170万円を渡した疑い。8月25日に始まった公判では検察側が被買収者とされる100人を含む139人の証人尋問を申請。東京地裁は現時点で139人のうち22人の証人採用を決定し、順次尋問している。

【関連記事】

広島県議会遠い正常化 大規模買収公判中、初の本会議で欠席も

平本県議「危ない金」 案里被告から妻に30万円と証言、口裏合わせの電話も

下原県議「違法な金」認識 案里被告から50万円受領認める

奥原県議「大罪犯した」 案里被告と目合わせず

首相秘書団が広島行脚 参院選公示前、後援会関係者を「しらみつぶしに」

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

河井夫妻買収事件公判の最新記事
一覧