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≪菅政権の課題≫社会保障 持続可能な制度目指せ

2020/9/21

 100歳以上の高齢者が全国で8万450人(15日現在)にまで増えた。40年前は3桁台だったが、今年初めて8万人を突破した。医療の進歩などを背景に、超高齢化社会という未知の領域に日本が突入しつつある証しではないか。

 中国地方は、その先進地と言えよう。人口10万人当たりの人数は8年続けて全国トップの島根県をはじめ、3位に鳥取県、5位に山口県と上位を占めた。高齢者が培ってきた知識やスキルをどう生かすか。地域の課題として、きょうの「敬老の日」を機に私たちも考えたい。

 国には、さらに大きな課題がある。医療や年金、介護を含めた社会保障制度を持続可能なものにすることだ。痛みを伴う改革であっても実行できるか。菅義偉・新政権が問われている。

 まずは中長期的な視点で考える必要があろう。制度を支える現役世代は少子化による人口減少で先細りしている。逆に給付を受ける高齢者は増え続ける。2025年には「団塊の世代」が全て75歳以上の後期高齢者になり、医療・介護費はさらに膨らむ。1人当たりの医療費は75歳から増え、それまでの4倍以上になるからだ。

 団塊ジュニア世代が65歳以上に差し掛かる40年には、社会保障給付費は今の1・5倍の190兆円まで膨らむ見込みだ。50年ごろには、現役世代がほぼ同じ人数の高齢者を支えなければならない「肩車型社会」が到来する。これでは制度は持つまい。持続可能なものにする改革は「待ったなし」である。

 真っ先に考えられる対策は、制度を支える層を厚くすることだろう。健康で働く意欲のある高齢者には年齢を問わず働いてもらう。希望すれば70歳まで働ける制度が来春始まる。就業機会を確保する努力義務を企業に課す関連法が今春成立した。

 高齢者に仕事という居場所を提供して、生きがいを持ってもらう。働き手の減少を補うことにもなる。そのため、安心して働ける環境づくりが政府には求められる。高齢者の労災をこれ以上増やさないよう安全確保に力を尽くしながら、経済的事情などで働かざるを得ない人たちの健康管理や待遇改善への目配りも怠ってはならない。

 給付を減らしたり負担を増やしたりする対策も考えられる。ただ国民に痛みを強いるため、反発が予想される。支持率の高かった安倍政権でさえ本腰を入れては切り込まなかった。とはいえ、いつまでも対症療法や急場しのぎでは済まないはずだ。

 菅首相は、自民党総裁選の時から国の基本は「自助・共助・公助」だと強調していた。社会保障制度にも当てはめるつもりだろう。道を付けた70歳までの就労や年金受給開始年齢の引き上げ、老後資金の貯金などを自助と見ているのではないか。

 そういう形で国民に協力を求める以上、政府は共助・公助をしっかり整えなければならない。医療や年金、介護といった公的保険の持続可能性や、そのための税財源確保である。自助に頼るだけでは、老後の安心は個々の努力次第だと国民を突き放すことになりかねない。

 コロナ禍を言い訳に改革を先送りすれば、つけが次世代に回ってしまう。まずは制度の先行きへの危機感と処方箋を国民に示すことが急がれる。

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