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【こちら編集局です】単身は不支給、不公平 「亡くなった父、10万円給付の対象者だったのに」

2020/9/25
基準日以降に亡くなった給付対象者の対応を説明する総務省のウェブサイトの画面

基準日以降に亡くなった給付対象者の対応を説明する総務省のウェブサイトの画面

 新型コロナウイルス対策として国が全国民に一律10万円を配った特別定額給付金。「父は受給対象者だったのに申請書が生前に届かず、受け取ることができなかった」。広島市西区の読者から編集局にそんな便りが届いた。しかし、総務省によると、申請前に死去していても遺族が受給できるケースはある。どういうことだろう。調べてみると、「世帯主義」の給付金制度と、自治体による申請書発送日のばらつきが生み出した不公平な現状が浮かび上がった。

 特別定額給付金は、基準日である4月27日に住民基本台帳に記録されている人が受給対象になった。読者の父親は5月末に死去したため対象者だ。単身世帯だった父親に代わり、死後に読者が申請。いつまでも振り込まれないため、同省のコールセンターに問い合わせると「申請時に亡くなっている場合、給付されない」と回答された。

 実は、申請までに死去した人の分を遺族が受給できるかどうかは、世帯構成で異なる。単身の世帯主が申請までに亡くなっていた際、遺族は世帯が別であれば受け取れない。しかし、2人以上の世帯だと、基準日に存命であれば死亡した家族の分も受給できる。世帯主が亡くなっても、世帯主を変更することで遺族の受給は可能だ。

 なぜ単身と2人以上の世帯で対応が違うのか。給付金は世帯で原則一括申請する形式を取った。「単身世帯者が死去すると、受給世帯自体がなくなる」(同省特別定額給付金室)とみなすからだ。

 ▽申請書発送の遅れも影響

 この読者のケースは、父親が住んでいた広島市の対応の遅れも影響していた。

 同市が申請書を送るため郵便局に持ち込んだのは5月27日。基準日から1カ月過ぎていた。父親方に届いたのは亡くなった数日後の6月初旬。「自治体の対応が早ければ、父親が受け取れた可能性はあった」。読者は同省のコールセンターでそう告げられたという。

 申請書の発送日は自治体ごとにばらついた。人口が集中する都市部では送付までの作業が長引いたからだ。広島市の発送日は、広島県内23市町では呉市と並んで最も遅く、最も早かった大竹市とは約1カ月もの開きがあった。

 基準日から申請書の発送日までに亡くなった単身世帯数は、1世帯だった大竹市に対し、広島市は371世帯に上った。読者は「『広島市民の不運』だと諦め、仏前に給付金を供えることもできないのでしょうか」と手紙にしたためた。

 個人ではなく世帯に配られた給付金。編集局にはこんな声も寄せられた。「母親を長年介護し、生活費全般の面倒も見てきた。世帯を分けていたから給付されないというのは、何かしっくりきません」

 不公平さを是正しようと、各地の自治体で独自の対応を取る動きが広がっている。その一つが愛知県豊橋市。受給資格を持ちながら申請前に死去した単身世帯主の相続人に対し、国と同額の10万円を支給する。今月11日現在、62人分を済ませたという。ただ人口規模や財政事情などは地域で異なり、全ての自治体が同様の対応を取るのは難しい。

 広島、岡山など全国20の政令指定都市でつくる指定都市市長会は7月末、総務省に緊急要請をした。現在の国の対応を「著しく公平性を欠く」と指摘。基準日以降に単身世帯主が亡くなった場合、遺族が申請し受給できるよう求めた。

 申請書が届かないうちに亡くなり、受給できなかった単身世帯者に何の落ち度もない。「公助」の役割を果たす上でも、国は救済策を講じるべきではないか。(小林可奈)

 <クリック>特別定額給付金 国の新型コロナウイルスの緊急経済対策の一つで、国民1人当たり10万円を配る事業。この事業を盛り込んだ2020年度第1次補正予算は4月30日に成立した。原則、市区町村が世帯主の金融機関口座に家族分をまとめて振り込む。申請期限は住んでいる市区町村で郵送受け付けが始まってから3カ月以内。総務省によると、7月豪雨で被災した市町村を除き、全国全ての自治体で申請期限を迎え、今月18日までに総世帯(1月1日現在)の99・96%に当たる約5905万世帯に給付した。 


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