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【こちら編集局です】作品に罪はあるか 映画出演者が不祥事、ファン「お蔵入りやめて」

2020/9/29
SNS上で公開を心配する声が上がっている映画「るろうに剣心 最終章」のホームページ

SNS上で公開を心配する声が上がっている映画「るろうに剣心 最終章」のホームページ

 「お蔵入りだけはやめてほしい」。広島市内の会社員男性(34)から、編集局に切実な声が届いた。来春公開予定の映画「るろうに剣心 最終章」が無事に公開されるのか―。そう気をもむのは、大麻取締法違反(所持)罪で29日に起訴された俳優の伊勢谷友介被告が出演しているからだ。芸能人やアーティストが逮捕されるたび、沸き上がる「作品に罪はあるか」の議論。あなたはどう捉えるだろう。

 「るろうに―」は、そもそも今夏公開するはずだったが、新型コロナウイルスの影響で1年近く延期になった。「シリーズの最終章で物語のクライマックス。原作では最も大切なエピソードだけにどう描かれるのか、公開を楽しみに待つファンは多いはず」と男性は力を込める。

 伊勢谷被告は、ストーリー展開の鍵を握る重要な役どころ。それだけに、ツイッターなど会員制交流サイト(SNS)上でもファンは心配を募らせる。「そのまま公開すべきだ」「他の出演者、スタッフの思いもくんで」…。配給元のワーナー・ブラザースは「協議中であり、現時点で何も答えられない」としている。

 ▽公開か自粛か 判断の説明を

 近年は芸能人の不祥事を受け、作品の公開を自粛する動きが目立つ。昨年2月には、元俳優の新井浩文被告(強制性交罪で懲役5年の判決を受け控訴中)が主演する映画「善悪の屑(くず)」が公開中止となった。麻薬取締法違反容疑で逮捕され、執行猶予付きの有罪判決を受けて今年2月に復帰したピエール瀧さんの場合も、出演番組の中止やCDの出荷停止・回収などが相次いだ。

 公開か自粛かの判断について、メディア論が専門の立命館大の飯田豊准教授は「1990年代から右へ倣え、前例踏襲の流れが強まっており、個別に冷静に判断するプロセスが省略されてきた」と指摘する。

 そんな中、注目を集めたのが東映の決断だ。伊勢谷被告が出演する来年公開の映画「いのちの停車場」について、配給元の同社は今月11日、予定通り公開すると発表した。同社は昨年、ピエール瀧さんが出演する映画「麻雀放浪記2020」も公開に踏み切っている。会見で手塚治社長は「作品と個人は別。作品を守る」と述べ、「映画館では観賞料を支払って見る。観客の意思がある」と強調した。

 一方、厳しい判断を下したのはNHK。「犯罪者を魅力的に表現してはならない」という番組基準により、伊勢谷被告が出演するオンデマンドで配信中のドラマ「白洲次郎」、大河ドラマ「龍馬伝」など3番組を販売停止とした。不祥事の内容や視聴者の受け止めを考慮し個別に判断しているとし、今回は反社会的な行為を容認できないという考えに基づくという。

 前例踏襲ではなく、犯罪の種類や悪質さなども踏まえ独自の基準で判断する―。飯田准教授は、こうした東映やNHKの姿勢を評価する。「なぜ公開するのか、あるいは自粛するのか。制作側は理念に基づき、分かりやすい言葉で伝えるべきだ。作り手の思考停止は、芸術表現そのものの萎縮につながりかねない」と話している。(里田明美)

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