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決別 金権政治

現金、初当選からか 過去に落選「強い恐怖」 【決別 金権政治】<第1部・巨額の買収事件>(6)

2020/9/30 22:56
1996年10月の衆院選で初当選し、支持者と万歳する克行(中央)

1996年10月の衆院選で初当選し、支持者と万歳する克行(中央)

 大規模買収事件で公判中の河井克行(57)=衆院広島3区=の後援会の女性は首をひねる。「昔からお茶の一杯も出さないくらいお金に厳しい。なんでお金を配ったのか分からない」。同じような「克行評」は後援会員たちから数多く聞かれる。

 だが一方で、違う一面を知る後援会員もいる。

 ▽「交通費だから」

 2019年5月、広島市安佐北区に暮らす後援会員の男性の自宅に克行が突然現れた。「激戦だから読んでおいて」と、二つ折りにした週刊誌の記事のコピーを置いて帰った。コピーを開くと、克行の妻案里(47)=参院広島=が自民党公認で立候補を決めた同年7月の参院選情勢が書かれていた。隠すように5万円入りの封筒が挟んであった。

 かつての記憶と重なった。野党だった自民党が政権奪還を目指した12年の衆院選。公示前、克行の事務所に呼び出された。当時、広島3区では旧民主党議員が議席を得ていた。この時も克行は「交通費だから」と封筒を差し出してきた。男性は断ったという。

 克行は衆院選で7回の当選を重ねてきたが、その歩みは順風満帆ではない。中選挙区制だった1993年、旧広島1区に初挑戦するも落選。小選挙区制が導入された96年は広島3区から立ち、初当選したが、次回の00年は、後に自民党入りした増原義剛(75)に敗北を喫した。

 広島3区のバッジを巡り競い合う克行と増原。同根対決を避けようと自民党は03年、小選挙区と比例代表の候補者を選挙ごとに入れ替える「コスタリカ方式」を広島3区で採用した。男性に「交通費」を渡そうとした12年の衆院選は、党が政権奪還を狙うとともに、比例中国の現職だった克行にとっては広島3区に転じ勝利を目指す選挙だった。

 「あの時も激戦が予想された選挙。過去の落選への強い恐怖がそうさせたんだと思う」と男性。克行が現金を持ってきた12年の衆院選と19年の参院選。激戦だったことが共通する。

 19年の参院選では自民党現職の溝手顕正(78)と案里が争い、克行は100人を買収したとして起訴された。「被買収者」には過去の衆院選前に現金を受け取った後援会員が複数いた。

 金の力に頼る選挙はいつからなのか―。元秘書の男性は96年の衆院選を思い起こす。

 ▽菓子折りに隠す

 当時、地元の秘書だった男性は衆院選公示前、選挙区内のベテランの地方議員に菓子折りを手渡しに行った。克行の指示だった。

 「もみじまんじゅうだったか、煎餅だったか。もう中身は忘れたね」。だが、菓子箱に現金入りの封筒をしのばせていたことは覚えている。「カネの威力は分かりやすい。明らかに相手先の先生の対応は良くなった。政治の世界はこれが普通なんだと思いましたよ」

 元秘書は、この衆院選が「源流」だと思っている。浪人中だった克行が、衆院議員としての道を歩み始める出発点である。(敬称・呼称略)

<第1部・巨額の買収事件>
(1)菅氏来援の直前「裏仕事」 克行氏、現金ばらまき
(2)1日で7人に現金 分裂選挙、にじむ焦り
(3)地盤なき地で躍起 「家内頼む」個室授受
(4)統一選でばらまき 「陣中見舞い」「当選祝い」
(5)領収書なき「裏金」 選挙区内は以前から
(6)現金、初当選からか 過去に落選「強い恐怖」
(7)公設秘書2人が加担 「好きなん買いんさい」
(8)案里被告、追及する立場逆転 説明責任を自身も回避

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特集 河井夫妻買収事件公判

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