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決別 金権政治

案里被告、追及する立場逆転 説明責任を自身も回避【決別 金権政治】<第1部・巨額の買収事件>(8)

2020/10/3 23:06
逮捕の前日、参院本会議を終えて国会を後にする案里(6月17日)

逮捕の前日、参院本会議を終えて国会を後にする案里(6月17日)

 「開かれた議会を目指そうという前向きな志を共有していたのに。ただただ、残念」。2003年の広島県議選で初当選し、まだ初々しかった当時の河井案里(47)=参院広島=を知るベテラン県議が言う。

 ▽女性の視点反映

 当時、県議会に女性議員はゼロ。29歳だった案里を含む女性3人が議席を得ると、注目を浴びた。3人は自らを3本の花に例え「サン・フラワー」という超党派の勉強会を結成。地域の課題を探ろうと、県民との意見交換会を重ねた。女性のスーツに着けやすいピン式の議員バッジを導入させるなど議会内にも女性の視点を反映させ、案里も熱心に取り組んでいたという。

 そんな案里が名をはせたのは、当時の知事、藤田雄山(故人)の後援会不正事件だった。05年11月に事件が表面化すると、本会議で追及を続けた。

 語り草は06年3月の県議会予算特別委員会。当時、後援会側が過去の知事選で自民党県議たちに「対策費」を配った買収疑惑が明るみに出て、県政界は揺れに揺れていた。

 「説明責任を果たしているとお考えですか」「対策費とはどのようなものですか」。矢継ぎ早に質問を繰り出す案里に対し、藤田は具体的な説明ができず「県民の政治不信を招いた」とわびた。説明不足に業を煮やした案里は「私がもし、広島県知事でしたら、おそらく辞職をしています。男らしくしなさい」と切り捨てた。

 だが今、その矛先はブーメランのように案里に向かう。検察当局は、19年7月の参院選広島選挙区で当選するため、夫の克行(57)=衆院広島3区=と共謀して県議ら5人に計170万円を配ったとして案里を逮捕、起訴した。

 ▽「期待を裏切り」

 案里は起訴内容を否認し、無罪を主張する。しかし、東京地裁で8月から始まった公判では、現金を受け取ったとされる5人のうち4人が証人として出廷し「参院選で応援してほしいと言われた」「選挙違反の金だった」などと証言した。

 逮捕前、案里は弁護士に止められているなどとして、疑惑について具体的な説明をしなかった。県議会で案里が藤田に散々求めた説明責任を果たさず、逮捕、起訴された後も辞職していない。「前知事の後援会不正事件で案里さんを頼もしく思い、政治家として期待していた有権者への裏切り。追及した本人が金権政治に身を置き、自分をおとしめてしまったのは情けない」。ベテラン県議は冷ややかに語った。

 案里が昨年の参院選に立候補した際のキャッチコピーは「日本の未来に、花を咲かそう」。「サン・フラワー」として取り組んでいた県議1期目の活動をどこかで思い起こしたのかもしれない。「あの頃と同じ県民目線で、地に足がついていれば違ったはず」。この県議には今、買収事件の被告として法廷に立つ案里の姿が遠い存在に見えている。(敬称・呼称略)=第1部おわり

 <クリック>藤田雄山前広島県知事後援会の政治資金不正事件 2003年の政治資金パーティーで8600万円を集めながら県選管には収入を5千万円と報告したなどとして、後援会の事務局長が政治資金規正法違反罪で起訴され、禁錮1年6月、執行猶予3年の有罪判決が確定した。06年2月の初公判で検察側は、後援会が毎回の知事選で各種議員に現金を渡したと指摘。その後、公開された裁判記録で、最初の知事選で2億〜3億円、2期目が3千万〜4千万円だったとする元秘書の供述調書が明るみに出た。藤田、県議会とも真相解明の断念を表明。説明責任を果たさぬまま裏金疑惑の幕引きがされた。

<第1部・巨額の買収事件>
(1)菅氏来援の直前「裏仕事」 克行氏、現金ばらまき
(2)1日で7人に現金 分裂選挙、にじむ焦り
(3)地盤なき地で躍起 「家内頼む」個室授受
(4)統一選でばらまき 「陣中見舞い」「当選祝い」
(5)領収書なき「裏金」 選挙区内は以前から
(6)現金、初当選からか 過去に落選「強い恐怖」
(7)公設秘書2人が加担 「好きなん買いんさい」
(8)案里被告、追及する立場逆転 説明責任を自身も回避


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