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「木綿の詩人」逝く

2020/10/6 7:03

 フランスで最も有名な日本人の名は「KENZO」らしい。その本人、高田賢三さんが亡くなった。「パリは息子の死を悲しむ」。首都の市長の弔辞が、希代のデザイナーの現地での存在感を物語る▲無名の若者が花の都へ渡ったのは、米国がベトナム戦争で北爆を始めた1965年。ほどなく各国の学生たちは、世の権威や体制に激しく抵抗していく。そんな時代が、自由や解放を思わせるKENZOの服を生んだ▲そのデザインは東西融合の産物でもあった。日本の着物のように、直線で裁った布を縫い合わせる。すると、体の曲線に合わせる西洋のドレスとは異なり、体と服の間に微妙な空間が生まれる。それが「服に縛られたくない」若者に受けた▲70年にパリで披露した最初のコレクションでも日本産の小花柄の木綿や浴衣地を使い、ゆったりと仕立てたという。後に「木綿の詩人」と呼ばれるゆえんだ。ショーで音楽を流した世界初のデザイナーでもあるらしい▲翌71年には自身も含めた3ブランドで合同ショーを開き、それが今に続くパリコレの原型とされる。そうして時代の最先端を走り続け、この秋、新型コロナに感染した。謹んでご冥福をお祈りしたい。 

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