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「vote」を連呼するより

2020/10/7 6:41

 「VIP病室」なるものを、つぶさに取材した5年前の文芸春秋のルポを読む。某旧帝大病院の〈特別室A〉は日本最高峰をうたう病室で、広さ155平方メートル。1泊36万円、全額患者負担と聞けば、血圧も跳ね上がる▲こうした部屋は専ら内外の富裕層目当てで、歴史ある某私立医大病院も負けてはいない。勤務医でさえ伝聞でしか知らない〈特A室〉。記者会見が開ける応接室があるほか、外からのぞけぬよう反射ガラスを施し、しかも防弾仕様だというから驚く▲あの大統領も、VIP扱いだったろう。それはまだしも、治療中に警護員を伴って専用車で外出し、沿道に手を振るとは信じられない▲この車は化学テロに備えて気密構造を持つ。それだけに同乗者の感染リスクは高い。「余計な演出で人の命を危険にさらした」と非難を浴びながら、大統領は入院からわずか4日目で退院。「恐らく免疫もできている」と言い放ったのにも恐れ入る▲ある米紙は「VIP症候群」と皮肉る。重圧で主治医が新薬を次々に試しているという指摘である。vote(投票を)の4文字を大統領は連呼するものの「一票」より御身(おんみ)と側近一人一人の「一命」が大切だと思うが。 

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