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肌感覚の危うさ

2020/10/10 7:10

 教壇に立って教室内を見渡す。生徒がどれほど分かっているか、肌で感じ取る。付いて来られない子がいれば、すかさず対応する。それができてこそ、ベテラン教師と言えるのだろう▲こちらは「肌感覚」で3千人近い町民の過半数が賛成していることが分かると言う。原発ごみの最終処分場選定を巡る調査にきのう、自ら名乗り出た北海道寿都(すっつ)町の片岡春雄町長である。「分からないようなら町長を辞めた方がよい」とまで述べた▲核か過疎か、と問われれば核だと考えるから町長に賛成だ―。そんな声も町民からは聞こえてくる。最初の調査だけで最大20億円、第2段階まで進めば、さらに70億円が転がり込むのだから、財政難の町には、おいしい話かもしれない▲とはいえ先月の共同通信の町民100人アンケートでは67%が最終処分場の受け入れに反対した。いったん金を受け取ってしまえば「後戻りができなくなる」。そんな不安を町民が拭い切れないのも、無理はあるまい▲核のごみから出る放射線が自然界レベルになるまで10万年かかる。そんな歳月が肌感覚で分かる生き物は地上には居ない。未来の町民にも思いをはせるような、肌感覚は磨けないものか。

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