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非正規格差、最高裁判決 賃金体系の明確化必要

2020/10/14 5:56

 非正規労働者にボーナス(賞与)や退職金が支給されないのは不合理か否か―。待遇格差を巡って争われた2件の訴訟で、きのう最高裁は、いずれも不合理と認めない判決を下した。正社員との不合理な待遇格差を禁じる「同一労働同一賃金」制度を新たに導入した国の施策に逆行する判断にも映る。

 大阪医科大のアルバイト職員だった女性に賞与を支給しないことの是非が問われた訴訟では、二審が認めた賞与支給についての請求を棄却した。

 一審の大阪地裁判決は、原告側の訴えを退けた。しかし二審の大阪高裁は、正規職員らに支給される賞与は年齢や業績と連動しておらず、「就労自体への対価」であると判断した。正規職員6割程度の賞与を払うように命じていた。

 最高裁は今回、賞与は「正職員として職務を遂行できる人材を確保し、定着を図る目的で支給している」とした。アルバイトは業務が相当簡便で配置転換もなく、賞与の不支給は不合理な格差に当たらないとした。非正規は人材として定着しなくていいということだろうか。

 もう1件は東京メトロの子会社メトロコマースの元契約社員らが退職金支給を求めていた。最高裁は、不支給が「不合理な待遇格差」に当たらないと判断した。配置転換の有無など労働条件が異なるとの理由からだ。企業側の裁量を広く認めた判断といえよう。

 いずれの訴訟も旧労働契約法で定める「非正規雇用と正社員の不合理な格差」に当たるかどうかが争われた。「同一労働同一賃金」制度が今年4月に一部に導入されて以降、初の最高裁判決となった。

 大阪医科大の元アルバイト職員は判決の前、「私だけの裁判ではなく、全国の非正規労働者を背負った裁判」と話していた。「雇用の調整弁」とされる非正規労働者の厳しい実情があるからではないか。

 総務省の労働力調査によれば、今年8月時点で非正規労働者は労働者の4割弱を占める。昨年8月比では120万人減少したが、これはコロナ禍による経営状況の悪化で雇い止めや解雇が相次いだためだ。

 政府は「同一労働同一賃金」制度で、正社員と非正規労働者の待遇に差がある場合、何が不合理に当たるのか、原則となる考え方や具体例をガイドラインとして示している。ただ退職金や賞与の扱いなどについて明示はされていない。

 例えば賞与については「同一の能力の向上には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を」とあいまいな内容で、どの程度なら違法でないかなどははっきりしていない。企業によってなお扱いに差があるのが実情だ。

 今回の二つの判決は、非正規労働者に賞与や退職金を支払わないことを是認したわけではない。あくまで個別のケースごとに詳細に検討すべきだとの考えを示している。

 同じ仕事をしているのに待遇で大きな差があれば、理不尽に感じて当然だろう。企業側は、ボーナスや退職金の支給目的や支払い基準といった賃金体系を明確にする必要がある。

 「『非正規』という言葉を一掃する」として「働き方改革」の旗を振った国も、責任を持って格差是正に取り組むべきだ。

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